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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

ザンデルリンク指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年日本公演

ユリア・フィッシャー201907


2019年7月3日
サントリーホール
【演目】
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲(ユリア・フィッシャー)
(アンコール)パガニーニ:24の奇想曲第2番
ブラームス:交響曲第1番
(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団は、まだクラシックを聴き始めの頃に観に行ったことがある。演目はベートーヴェンの交響曲第7番とブラームス交響曲第1番という黄金の名曲プログラム。オケの良し悪しがまだそれほどわかっていなかったときだったとはいえ、馴染みのある曲だったこともあって良い印象が記憶に残っている。

その後もこの指揮者とオケのコンビはよく日本に来ているけれど、どの日もベートーヴェンやブラームスの有名曲が中心の演目。オーケストラとして音楽性をアピールすることよりも人気曲で集客しようという意図しか感じられないプログラムで、そればかりでいいの?と疑問を感じて観に行こうという気にはなれなかった。ミヒャエル・ザンデルリンクは親の七光りで、音楽家としての意欲が足りないんじゃないかとも思った。ちなみに、今回の日本ツアー別日では、

シューベルト 交響曲第7番「未完成」
ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」

という、ある意味滅多にお目にかかれない絵に描いたような人気曲プログラムが組まれていたりする。

ミヒャエル・ザンデルリンクは今シーズン限りで主席指揮者の座を退く(後任はヤノフスキ)ことになっているけれど、これまでに目立った活躍は聞いたことがなく、集客プログラムを何年も続けるような指揮者が評価されるようなことはないのでは?と思っていたら、最近はコンセルトヘボウ管弦楽団とベルリン・フィルでも客演しているというから、なんとも不思議な感じがする。

それはともかく、この日も正直なところ興味をソソられない、普通なら足を運ぶことはないプログラム。しかし、ソリストがユリア・フィッシャーとなると観に行かないわけにはいかない。ソリストがお目当てでオケのコンサートに行くのはこれが初めてのこと。

以前の記事(http://buhaina.blog.fc2.com/blog-entry-412.html)に書いた通り、ユリア・フィッシャーのヴァイオリンに僕は魅せられてしまっている。彼女のヴァイオリンは、端正でありながら単なる折り目正しさに収まることなく、情感が豊か、抑えるところは抑えつつ、ここぞいうところでの荒々しさも当然備え、その表現の幅の広さと曲の場面にあった表情作りの巧さがあり、それを曲全体の表現に昇華させている。

有名曲ともなると、これまでに数多くの名手による録音が残されており、過去の演奏家とは違う表現を主張するために、創意工夫、趣向を凝らした、場合によってはわざとらしいフレージングをする奏者も少なくなく、それを好ましいとする人には彼女のヴァイオリンは少し物足りないと感じるかもしれない。でも僕は、正直さに溢れていながら端正な技巧と表情が豊かな彼女のヴァイオリンに惹かれる。

そのフィッシャーによるブラームスのヴァイオリン協奏曲、まさにここで書いてきた通りの演奏だった。普通、期待した通りの結果が返ってきただけの場合、人間はそれほど満足したりはしないんだけれど、そんな不足感は皆無で演奏に没頭してしまっていた。要は好きな演奏家の演奏を、生で聴いたらやはり素晴らしかったという当然と言えば当然の話。実演を聴いて付け加えるとしたら、完璧にコントロールされた微音の美しさと繊細な響きが出色で、第2楽章は素晴らしい聴きどころだった。このまま演奏が終わらなければいいのに、と思う演奏を聴けたことは本当に幸せなことである。

後半の交響曲第1番は、この日に限ってはボーナス扱いで気軽に臨んだ。6年前に聴いて好印象だったこのオケ、しかしその後多くの素晴らしいコンサートに触れて耳が肥えてしまった今聴いたら物足りないと感じるんじゃないかという懸念があったから、期待値を下げていた。ところが、オーソドックスなテンポによる進行と、誇張のない自然で柔らかい表現が心地よく、シュターツカペレ・ドレスデンにも通じるドイツオケらしい少し渋めの(洗練を志向していないとも言える)サウンドが曲に良く合っている。厳しい目で見ると、金管と(オーボエ以外の)木管に力強さに物足りなさがあった(上手くないのに汚い音で大きな音を出されるよりはずっと好ましい)し、テンポを急に上げたときに弦のセクションが乱れたりする場面もあったけれど、手練の曲ということもあってブラームスの良さを上手く表現していたように思う。経験上、S席が2万円以下のオケで安心して音楽に身を委ねられる演奏を聴けることは少ないだけに嬉しい誤算だった。

というわけで望外に良い演奏を聴けたこの日のコンサート。もちろん、ユリア・フィッシャーを存分に味わえたことが最大の喜び。次はバッハの無伴奏や、リサイタルでフィッシャーを聴いてみたい。

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