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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(ネタバレあり)

ファウンダー201810

昔々、「ファストフードが世界を食いつくす」という本が新刊で発行されていたときに読んだことがある。調べてみたら、2001年の発行なのでもう17年も前の話。この本には数多くのマクドナルドのネガティヴ情報が書かれていて、読んだあと数年間はマクドナルドを食べることはなくなり、ハンバーガーじたいもあまり食べなくなってしまった。それまでファーストフード産業がどのように成り立っていたか考えたことがなかった僕は、利益が最優先される資本主義ビジネスの暗部にうんざりして、あえてハンバーガーなんて食べなくてもいいや、と思うようになっていた。

というわけで、マクドナルド兄弟が経営していた独自のシステムのハンバーガー・ショップを、フランチャイズでビジネスモデル化したレイ・クロックという人物がいたこと、商業主義についていけなくなった兄弟が降りてしまったことも知っていて、「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」もそういう話だろうと思っていたら、実際そのような話でした。

だから面白くなかったかというとまったくそんなことはなく、レイ・クロックという人物を描くことを中心に据えた話にしたことで、人間の強さと弱さを見事に表現した、なかなか見応えのある映画に仕上がっていた。

映画の最後にマクドナルド兄弟の弟がレイにこう尋ねる。「マクドナルドのシステム、ノウハウを知ったのに、なぜ自分でビジネスを起こさなかったのか」。これに対して「マクドナルドという名前がイイから。クロックという名前の店で食べたいと思わないだろう?」と嘯く。

名前がいいから、というのは確かにその通りだったかもしれないけれど、それは小さな理由のひとつだったにすぎない。映画前半では、投資家に持ちかけてオープンさせたフランチャイズ店が、メニューやハンバーガーの内容を勝手に変更していることにレイが怒っているシーンが描かれている。注文してすぐに提供されるシステムも味も気に入っていたことはレイが最初に店を訪れた時点で描かれていて、それこそがレイが一番惚れ込んだ理由であることがわかるはず。ではその惚れ込んだものに対するレイの思いはどうなったのか?品質などどうでも良いと思うように変わってしまったのか、品質が重要なのはわかっているけれどビジネス拡張のためには優先順位を下げるのも仕方がないと思っていたのか。はたまた、同じ品質のものでも粉というだけで拒絶反応を起こすマクドナルド兄弟の非合理的な頑固さに愛想を尽かしたのか、などの細かい描写はされていないものの、結局、名前だ良いだけが理由でなく、それらが複雑に入り混じったものであったであろうことがなんとなく想像できる。

事実はどうだったか知らないけれど、この映画でのレイは自分の頭では何ひとつ斬新なアイディアを出していない。店の土地を所有して不動産運用すること、ミルクシェイクを粉末にして冷凍庫の電気代を節約することなど、他人のアイディアを実現化したにすぎない。そもそも、映画の最初のシーンのレイのセールストークが、胡散臭くてまったく買いたいと思わせてくれないからセールスマンとしても一流とは言えない。つまり、口数は多くても大したセールストークができない、斬新なビジネスのアイディアを思いつくわけでもない、つまり飛び抜けた才能の持ち主ではない。あるのは成功のためなら、嘘をついたり人を裏切ったりしてもいいから突き進むという「執念」だけ。執念も行くところまで行ったら、こうなれるという讃歌の側面もあるように見えてくる。

尚、マクドナルド兄弟の感覚と同様に、「そこまでして大儲けしたいと思わない」と感じる人は、僕を含めて多数いるはず。でも見方によればそれは負け犬の遠吠えにすぎない。レイを批判できるのは、人に恥じることのない方法で、レイと同様な成功を得る方法を考えた人だけだと思う。レイが酷い人間だと批判だけしている人は、だからきっと何も成し遂げられないはずだ。

尚、さほど優秀とは思えないセールスマン、人を裏切ってまで自分の利益を得ようとする器の小ささ、しかしそれでも前に突き進む意思の強さと精神力があるという、強い部分と弱い部分が同居したキャラクターを演じるマイケル・キートンが素晴らしい。大物感がありすぎたり、スマートすぎたりしてはいけない、でも単細胞の小物でもなく、押しの強さもある程度必要というバランスのキャラクターをこれほどうまく演じられる人はいないでしょう。間違いなくキートンにとってのベストアクト、今後もこれ以上の映画を残せるかどうかわからないほどの見事な演技でしょう。

マクドナルドは、世界的有名企業であり、何かと標的にされてしまう。「スーパーサイズ・ミー」という映画は、毎日マクドナルドを食べ続け「スーパーサイズはいかがですか?」と訊かれたらスーパーサイズを注文しなくてはならないというルールを課して、最終的には健康を損なうという内容になっているんだけれど、マクドナルドでなくても同じものばかり毎日食べて健康でいられる食品なんてものはない(バランス良い食事が健康に一番良いことくらいみんな知っている)わけで、企画からして悪意しか感じない。

ちなみに、今は普通にマクドナルトを僕は食べる。平均すると月に1回程度、時間がないときに小腹を満たす目的で利用している。「ファストフードが世界を食いつくす」で、あのポテトの匂いは香料で虫も近寄らないとか、低賃金労働者から搾取していることとかを知って酷い企業だとあの当時(34歳くらいのとき)は思ったものだけれど、どんな企業にも闇はあるし、多くの食事には体に良くないものが含まれていて、要は物事をバランスよく見渡すことができるようになると、過剰に摂取しなければ体に悪いなんてことはないと気づき、悪徳企業だという偏った思いもなくなって行く。こういう映画を見て、ただ「もう食べない」という思考停止に陥ることは避けたいもの。

それはともかく、この「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」、ビジネスマンとしてどう生きるかをまっとうに、そして丁寧に描いており、映画としての完成度も高い。なかなか良くできた映画です。主役に共感できるかどうかという視点でなく、人間を人間らしく、丁寧に描かれている映画に面白みを感じる人にお勧めです。



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