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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

実に困ったアーティスト、それはキース・ジャレット

The Koln Concert201808

僕はもともとロック、しかも自分の幼少時代にあたる60年代終盤から70年代前半の英国ロックをこよなく愛するロック少年だった。高校生のころからハンブル・パイやバッド・カンパニーといった渋めの英国ロック、そしてプログレ系などを愛聴する、変わった学生だった。

それでも10年、20年と聴いていると次のステップに進もうかな、と思い始め、2001年、34歳のとき「Inside Out」というインプロヴィゼーション主体のアルバムをリリースしたキース・ジャレットのCDが自分の意思で初めて買ったジャズのCDだった。

それから所謂50年代のモダンジャズに本格的にハマり、ジャズの魅力に取り憑かれて行ったんだけれども、ジャズに詳しい人ならご存知の通り、キース・ジャレットはそのラインから少し外れたところに位置している。

キースのピアノは確かにジャズがベースにありつつも、そのフレージングは独特で黒人臭さが皆無で時にポップな一面さえ見せる。また、キャリアの時期によって志向する音楽性は大きく異なり、60年代のアメリカン・カルテットやヨーロピアン・カルテットあたりの時期が音楽的にもっとも個性的で面白い。

一方で、人気が高く、今となってはもっとも親しまれているスタンダーズ・トリオは初期の一部を除いて、まったりした聴きやすい典型的なピアノ・トリオとして聴かれているらしい。アマゾンのレビューなどを読むと、普段ジャズを聴かない人のコメントが多く、そのネーム・ヴァリューの高さからか、親しみやすいピアノ・ジャズとして絶対的なポジションを確立しているように見える。

僕も、素直に好きとまでは言えない、なんて思いつつ気がつけばCDを25枚も持っているから、立派なファンなのかもしれない。それでも心の底から「キース・ジャレットが好き」と言えないところが我ながら不思議なところ。好きと言えない主な理由は「The Köln Concert」をはじめとするソロ作品にある。

「The Köln Concert」はキースの代表作とされていて、前編即興で弾かれるピアノへの評価は高いんだけれど、正直なところ僕は何も感じない。好きとか嫌いとか良いとか悪いとかそういう感情がまるで沸かず、とにかく何も感じずに右から左へ流れて行ってしまう。「The Köln Concert」の良さがわかることがキースの音楽性を理解することなのだとしたら、僕はキースのことがわからないのだと思う。

前述の通り、僕はアメリカン・カルテットやヨーロピアン・カルテットの頃のキースが一番面白い。またスタンダーズ・トリオでもインプロヴィゼーション主体の「Inside Out」や「Always Let Me Go」あたりはなかなか聴きごたえがあって今でも好きなアルバムと公言できるくらい気に入っている。

スタンダーズ・トリオは、途中からはすべてライヴ・レコーディング一辺倒で、美術センスのない僕でも作れそうななんの工夫もないジャケットのアルバムを量産し、人気が高いらしいんだけれど、これら、本当にイイですかね?キースや、ピーコック、ディジョネットほどのミュージシャンならこの程度の演奏は朝飯前という感じがするんですけど。ライヴ・レコーディングしてちゃっちゃとCDを化するビジネスに安易さを感じるのは僕だけではないと思う。

余談ながら「Always Let Me Go」のあとに日本ツアーをしたときに東京文化会館でライヴを体験したことがあって、咳払いさえもはばかられる雰囲気のナルシスティックなステージに閉口、演奏曲もスタンダードばかりで面白くなかったこともキースの印象を悪くしているかもしれない。アンタ、スタンダードを軽く聴かせる演奏で、咳払いに「シー」ってやってて、ジャズなんてカジュアルな音楽で何やってんですか、って思ったことを今でもよく覚えている。

そんなわけでキースは長らく遠ざかっていたんだけれど、Spotifyでスタンダーズ・トリオの「Somewhere」を気まぐれで聴いてみたら、1曲目の"Deep Space / Solar"がえらく良い。

Somewhere201808

マイルスのあの軽やかなバラードをアブストラクトかつスリリングに演奏していて思わずCDを久しぶりに購入してしまった。それ以降の曲はいつものスタンダーズ・トリオではあったけれど、この1曲めだけでも買ってよかったと思わせる素晴らしい演奏だった。すでにスタンダーズ・トリオの活動はリタイアしたそうだけれども、もうこれ以上のものは出てこなかっただろうから十分でしょう。

あと、バルトークの協奏曲なんかも演奏したりしているけど、ぶっちゃけキースでなければいけない理由は見当たらず、普通にクラシックのCDを聴いた方がよほど良くて、こういった迷走ぶりも実はキースの一面ではある。ちなみに68年録音の「Restoration Ruin」というアルバムではピアノを含む全ての楽器(リコーダーやハーモニカ、ギターまで)を演奏し、調子っパズレの歌まで聴かせる迷作もあって、こういったツッコミどころ満載なのも実はキースの魅力のひとつなのかもしれない。

好きとは言えないけれど無視できない不思議なアーティスト、それが僕にとってのキース・ジャレットです。

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