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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

ジョー・ヘンダーソン 「In 'n Out」

In 'n Out

In 'N Out / Joe Henderson

一時期、ユニクロの企画でブルーノートのジャケットが何枚かTシャツ化されていた。

「Something Else」「The Sidewinder」「Cool Struttin'」という定番に混じってグラント・グリーンの「Talking About」、ジャッキー・マクリーンの「Let Freedom Ring」などのやや渋いものも取り上げていて、このアルバムもそんな「ふうん、これを選ぶか」の中の1枚だった。

ジョー・ヘンダーソンは今となってはあまり取り上げられることが少ないジャズ・ミュージシャンなのではないかと思う。アルト・サックスが、チャーリー・パーカー以降、モダン・ジャズでは割と小粒な人が多いのに対して、テナーは激戦区。元々トランペットと音域での相性もいいのでクインテットを組んでもバランスが取りやすいという有利さもある。

とりわけ、ソニー・ロリンズ、ジョン・コルトレーンという巨人と同時代にいた人は分が悪い。でも、ロリンズやコルトレーンだけがジャスじゃあない。次点の筆頭にいるジョー・ヘンダーソンは、その2人ほどではないにしても十分に優れたテナー奏者であり、しかしその2人ほどでないが故に存在感が薄いような気がする。少なくとも偉大なミュージシャンという目で見られることはあまりない。

確かにロリンズのように泉の如くフレーズが次々に湧き出てくるわけでもなく、コルトレーンほど深遠な精神性を持った音楽を作ったわけでもない。でも、こんなに優れたテナー奏者はそうはいないとすら僕は思っている。

ストレートで力強いフレーズ、メロディアスで柔らかい演奏だけでなくアヴァンギャルドなものまで難なくこなす柔軟性と器用さ。

中でもこのアルバムは、絶妙な相性を見せたケニー・ドーハムとの事実上双頭コンボで、支えるリズム・セクションはコルトレーン縁の強力な実力者たち。スピード感、キレはもちろん、エルヴィン・ジョーンズとリチャード・デイヴィスにる骨太のリズム感は黒人ならではのもの。マッコイ・タイナーの流暢なピアノも洗練されたムード作りを支えている。

そして何といっても、ヘンダーソンの堂々としたテナーとそれに絡むヒョロヒョロしたドーハムとの組み合わせが唯一無二の個性を生み出す。

ブルーノートのお作法に則り、全曲ドーハムとヘンダーソンによるオリジナル書き下ろしとはいえ、ジャズとして特別新しいことをしているかと訊かれるとそこまでのものではない。でも、ハードバップではまだ青臭いところもあったジャズという音楽がこの時代になって完全に成熟したことを示す完成度であることは間違いない。

曲の良さ、演奏のレベルの高さとスリル、録音、トータルの完成度と、これからジャズを聴いてみたいという人に「これがジャズってもんだよ」と自信を持って勧められる素晴らしいアルバム。ヘンダーソンのワンホーンで聴いてみたいという人は「Inner Urge」をどうぞ。

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