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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

「Miles Ahead」(ネタバレあり)

MILESAHEAD201802

僕が映画好きで、どんな映画であってもそれなりに表現したいものがあると考えて自分の感性と違うからという理由で批判したりしない(ましてやブログのような公共の場に書かない)ことにしている。しかし、とはいっても、この「マイルス・アヘッド」は流石に物申さないわけにはいかない。

マイルス・デイヴィスと言えば、同時代を生きてきたほとんどのジャズ・ミュージシャンが頭が上がらなかったほどのカリスマ。ここで言っているカリスマは、人気という言葉の置き換えで使う「カリスマ美容師」のような意味ではなく、本来の意味のカリスマのことで、フレディ・ハバードは、自分のライヴにマイルスが見に来ていると知って震え上がったとさえ言われている。誰も逆らことなどできない絶対的な帝王。作る音楽が何よりも風格に溢れた先進的なものだったからこそ、そのような存在になり得た。

で、この映画におけるマイルスはどうか。まず、外見がドン・チードルにしか見えない(苦笑)。例えば、「ドアーズ」におけるジム・モリソン、「レイ」におけるレイ・チャールスを演じていた役者は本人と見間違うほど似ていたし、そもそも俳優が(少なくともその時点では)それほど有名でなく、特定のイメージを持たれていない人が演じていたので入り込みやすかった。

でも、ドン・チードルは既に十分有名な俳優で、決して主役級ではなく、誠実で良い人か、ワルでもどこか小物感のある人物を演じているイメージがある程度広まっている。おまけに背が小さく、顔は場合によってはコメディアンでも通じそうな愛嬌のある顔をしている。

マイルスの見た目は怖い。皆が怖気づいたのも納得できる眼力と、只ならぬオーラがある。本などで紹介されるコメントは常に自信に溢れていて、どんなときでも先を見続けている者だけが放つ鋭さがある。音楽家としての弱みなど、どの角度から見ても見えてこない。

つまりあまりにもイメージが違い過ぎていて、ドン・チードルがマイルスのモノマネをしているだけにしか見えないのである。

また、空白の5年間を描いたという中身は、ヤクに溺れ、女にしがみつき、気に入らないことがあれば銃をぶっ放す単なるイカレ黒人でしかない。もちろん、マイルスだって人間であり、みっともないこともしただろうし、みっともないことを他人に晒したこともあるだろう。しかし、この映画のマイルスはチンピラそのものでしかなく、みっともないことしかしていない。盗られたセッション・テープを回収しようとする必死の形相は、コメディかと思わせるほどで、ドン・チードルの表情がそれを更に小物感を助長している。音楽要素もあるにはあるものの、それらしい言葉を並べて「なんかマイルスってスゴそう」という雰囲気を出そうとしているだけの薄っぺらなセリフしか出てこない。

一体、ドン・チードルはこの映画でマイルスの何を表現したかったんだろう。マイルスはカリスマではなく、弱さを持ち合わせた人間だったと言いたかったんだろうか。少なくとも、この映画を観て、「マイルスって魅力的な人だったんだな。これから聴いてみよう」と考える人はいないと思う。自分の思い入れのあるミュージシャンを主役にした映画はきっと自分のイメージと違うだろうから、という理由で期待値を大きく下げて観て、言葉を失うしかない映画だった。

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