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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

News Of The World 40th Anniversary Box

News Of The World 40th210711

かつて、CDが多くの過程に普及しはじめたころ、有名アーティストが揃ってボックスセットを企画した。それはアンソロジー的なものであり、高音質のCDへの収録によって価値を持たせるものだったように思う。その後、さまざまなアーカイブ放出的なボックスセット企画され、最近は、名盤と呼ばれるアルバムに付加価値を持たせて何枚かのCDを収録、ボックス化するという手法がトレンドになっている。このクイーンの「News Of The World 40th Anniversary Box」もそんな成り立ちのひとつと言えるでしょう。

本ボックスのハイライトは2つ。

ひとつは、「News Of The World」のレコーディングセッションと77年全米ツアーのドキュメンタリーを収めたDVD(約55分、輸入盤は日本語字幕なし)で、これまで見たことがない映像が多く収録されている。モノクロ映像が多く、ひとつのパッケージ製品とするには弱いものの、こうしたボックスに収録するのは妥当な判断で熱心なファンにも満足できるものでしょう。英AmazonのレビューによればBBC4で放送されたものとのこと。

もうひとつは、Disc 2 の Raw Seesions。
全曲、曲が始まる前後のスタジオでのチャット、試し弾き、弾き残しを加えたセッション風の仕上げ。ただし、多くの曲の演奏部分は既にある程度仕上がっていてコーラスも重ねられており、厳密に言えば Raw というよりは完成前テイクという趣になっている。

[We Will Rock You]
ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。
最後のギターソロはまだ仕上がる前の別テイク。

[We Are The Champions]
ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。
2コーラス目からブライアンのギターによるオブリガードがずっと付く(少々鬱陶しい)。
最後のサビの繰り返しが2回分多くなっている。

[Sheer Heart Attack]
完成前のラフ・ミックスでリード・ヴォーカルなし。アレンジはほぼ完成版と変わらない。

[All Dead All Dead]
歌メロ、歌詞がほぼ仕上がった状態でフレディがヴォーカルを仮入れしたと思われるもの。
本テイク用でないからこそのリラックスした歌い方が聴きどころ。

[Spread Your Wings]
歌メロ、歌い方がまだ未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。

[Fight From The Inside]
歌詞、メロディが未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。コーラスもなし。

[Get Down Make Love]
これぞ Raw Session。オーバーダブなしの恐らくは一発録り。ギミック無しのバンドの素の演奏が聴ける。

[Sleeping On The Sidewalk]
77年、2度め(すなわち「News Of The World」発売直後)の全米ツアーのごく初期のみに演奏されていたときのライヴ音源。スタジアムでのライヴに向いている曲とは言い難く、セットリストからすぐに外れたのも無理はない。リード・ヴォーカルはフレディ。シンプルな曲なだけに演奏はスタジオ盤とほぼ変わらない。

[Who Needs You]
ジョンのラフなアコギと、まだ一部歌詞ができていない状態のヴォーカルにマラカスだけ加えて、とりあえず録っておきました風のリハーサルのようなテイク。

[It's Late]
恐らくバッキングテイクは本テイクと同じでリード・ヴォーカルが別テイク。ブリッジ部分以降のヴォーカル以外それほど大きく歌い方は違わない。ギター・ソロは別テイク。

[My Melancholy Blues]
ヴォーカル別テイク。少し力の抜けた素朴な歌い方で、録り方のせいか声が生々しく目の前で歌っているかのよう。

ボックスには、初見の写真を含むLPサイズブックレット、当時のエレクトラ・レコード発行のプレス・リリースや写真、バックステージパスのレプリカなどが付属。

しかしながら、音源的に見るべきものは悲しいことに上記ディスクのみ。この種のレコーディング・セッションを部分公開する企画は他のアーティストでもよくあるものだけれども、熱心なファンなら良くご存知の通り、舞台裏まで見てみたいというマニア心理を満たすためのものに留まる。曲としての完成度が高いはずがなく、繰り返して聴きたくなるようなものではない。

その他のディスクは、熱心なファンなら持っていて当然のものばかり。Disc 1 は2011年のリマスターと同じ、Disc 2 は以下のように既発の音源が多い。

[1] Feelings Feelings(Take 10, July 1977)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み
[2] We Will Rock You (BBC Session)
[3] We Will Rock You (Fast) (BBC Session)
[4] Spread Your Wings (BBC Session)
[5] It's Late (BBC Session)
[6] My Melancholy Blues (BBC Session)
→ [2]-[6] は Complete BBC Seeesions に収録済み。
[7] We Will Rock You (Backing Track)
[8] We Are The Champions (Backing Track)
[9] Spread Your Wings (Instrumental)
[10] Fight From The Inside (Instrumental)
[11] Get Down, Make Love (Instrumental)
→ [7]-[11] は初公開。
[12] It's Late (USA Radio Edit 1978)
→ 初公開の超短縮バージョン
[13] Sheer Heart Attack (Live in Paris 1979)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。
[14] We Will Rock You (Live in Tokyo 1982)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。
[15] My Melancholy Blues (Live in Houston 1977)
→ ビデオ「レア・ライヴ」に収録済み。
[16] Get Down, Make Love (Live in Montreal 1981)
→ 「Live in Montreal」に収録済み。
[17] Spread Your Wings (Live in Europe 1979)
→ 「Live Killers」に収録済み。
[18] We Will Rock You (Live at the MK Bowl 1982)
→ 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。
[19] We Are The Champions (Live at the MK Bowl 1982)
→ 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。

つまり、目新しいのは [7]-[12] のみ、しかも [7]-[11] は単なるカラオケ・バージョンで、 [12] はこんなのもありました的な無造作な切り刻み版。既発の音源でも入手困難ならともかく、21世紀に入って以降にリリースされた音源から多数流用しているばかりか、単に「News Of The World」収録曲であるという理由なだけで81年、82年の音源を入れたり、ライヴ音源の古典中の古典である「Live Killers」から流用したりしてお茶を濁すのはいかがなものか。

このボックスは、ブックレットを見ればわかる通り、77年という時代、特に北米ツアーに焦点を当てた企画であるように思う。今年のアダム・ランバートとの北米ツアーの「News Of The World」を意識したビジュアルとセットリストも40周年だからこそのものであったはず。

しかし、だからこそこのボックスには大きな欠落がある。77年ヒューストン公演は、これまでも(今回のDVDでも)部分的にまずまず良好な映像と音源が公式に公開されており、ブートレグでは1ステージすべてを観ることができる。画質があまり鮮明でないという問題はあるものの、荒っぽくもロック・バンドとして一番脂が乗った勢いのあるこの時期のステージを公開するとしたら、このボックスをおいて他になかったんじゃないんないだろうか。しかも今回、"Sleeping On The Sidewalk" ライヴ・バージョンの公開で、77年北米ツアーにまだ良質な音源があることもわかってしまった。こうした音源が今回公開されなかったことで、ブライアンとロジャーが存命のうちにそれらが日の目を見る可能性はほとんどなくなったと落胆しているマニアも少なくないでしょう。

ブックレット(ただし収録音源のデータ詳細は書いていない)やおまけ類、LP、箱の存在感に魅力を感じている人には価値があるかもしれないけれど、映像や音源重視の観点において、このボックスの内容は物足りないと言わざるを得ない。これだけの値付けをするならばそれなりのものを作っていただきたいもの。

これまでのクイーンがリリースしている発掘モノは、レインボウ(74年)、ハマースミス(75年)、モントリオール(81年)、ミルトンキーンズ(82年)といったブートレグでも画質が良い映像のライヴ版こそ、しっかりとした形で出ているけれど、それ以外のものや新音源については小出し感が強く、ブライアンとロジャーの方針に疑問を禁じ得ない。お願いだからマニアを甘く見ないでくださいよ、と直接本人たちに言いたい気分です。

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