FC2ブログ

Enjoy Life, Enjoy Hobby

趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

ハイブリッド・ピアノ YAMAHA NU1 がやってきた

ピアノ20170513

あれは前回のピアノ・レッスンのときのこと。

超簡易版ペール・ギュント「朝」は左手がドミの和音で終わる。押さえる指は5番と3番。弾き終わったところで先生から「ドが出てないです」と指摘が入る。あれ?指は押さえているのに。なんのことはない、5番(小指)で押さえる力が弱くて音が出ていなかっただけのこと。でも家の電子ピアノではこんな感じの押さえ方でも音が出ていたはず・・・

よく言われているように電子ピアノは鍵盤を押せばキレイな音が簡単に出ます。ピアノに触れ始めてまだ1ヶ月足らずの僕でさえも、楽器屋で本物のピアノに触れた時に、しっかり押さえないと音が出ないな、ピアノで練習しないとラクな弾き方が身に付いてしまうのかも?と感じはじめていました。その前のレッスンから2週間、家の電子ピアノ(KAWAI CL25というエントリーモデル)ばかりで弾いているうちに、省力化が体に染み付き始めつつあることが早くも見え隠れしてきたというわけです。

正直なところ習いはじめの今は指の運びを覚えることが重要だろうと思っていたんですが、やはりピアノという楽器は音程と同じくらいタッチ(強弱や切ったり伸ばしたりすること)が重要であることを実感しつつあります。やや強めに鍵盤を押したときの音の出方も、電子ピアノだと思ったより大きな音が出てしまうので、むしろ抑え気味に弾こうという感じになってしまうことも、なんとなくわかってきました。上手く表現できないんですが、指の力の入れ具合と音量の大きさがリンクしていない感じがしています(上級モデルは違うのかもしれません)。「子供のピアノ演奏を聴くと、ああ、この子は普段は電子ピアノで弾いているんだなとわかりますよ」なんて話を楽器販売店のスタッフから聞いたことがありますが、あながち本物のピアノを売りたいがための方便ではないかなと思うくらい、やはり感覚が違います。

電子ピアノは、鍵盤を押し下げることでハンマーを動かしてピアノ線を打撃するという普通のピアノで行われるフィジカルな動きがないので、(当たり前のことながら)そのような手応えは感じない。アコースティック・ピアノの鍵盤フィーリングを出すべく、各メーカーとも上位機種は鍵盤とハンマーの動きを擬似的に作って、重みと手応えを感じさせるモデルをラインナップしているとはいえ、やはり実際のピアノの感触には遠く、音がラクに出てしまう感は拭えない。レッスンのときのピアノとの感触の違いが大きすぎるのは、あまり歓迎できるものではありません。

いつか、家にピアノを買うのもいいかも、電子ピアノはそれまでの代用品だから今より良いものは特に要らないかなあ、とこれまでは思っていました。でも今の電子ピアノでは正しいタッチが身に付きにくいであろうことが見えてきてしまった。う~ん、家でもピアノで練習できるようにした方が良いのは間違いない。できることならば欲しい。妻も「本物のピアノが欲しい」と言っている。でも、あんなに高くて、一度置いたら移動もできなくて、お手入れが欠かせないものを買う決断はそう簡単にはできません。

マンション住まいのため、仮にピアノを買ったとしても消音ユニットの装着+ヘッドホン使用が前提での話であり、よく考えてみるとピアノを遠慮なく鳴らすことができる機会なんてほとんどない。せいぜい鳴らすことができたとしても昼間の10分くらいが限界でしょう(それ以上だと苦情が来そう)。ピアノそのものの響きを味わうことができないのにピアノを購入するのはさすがに宝の持ち腐れというもの。

ここまで至らなさを挙げてきた電子ピアノには、実は音量を調整できるというマンション住まいの人にとって素晴らしい機能があります。ヘッドホンばかりでピアノを弾くのもあまり楽しくないわけで、音量を絞れば、近所迷惑にならない範囲である程度の音を出すことができるのは電子ピアノならではの強みだと言えるでしょう。電子ピアノがこれだけ各社からラインナップされているのは、日本の住宅事情というそれなりの理由があるわけです。

以上を踏まえてた上で電子ピアノの購入を検討し始めました。求める理想のピアノは、

●設置面積、大きさがアップライト・ピアノ以下であること
●サイレント機能は必須
●音量を調整できる(音量を絞れる)機能が欲しい
●鍵盤タッチはピアノに近い感触が欲しい
●できることなら価格は抑えめに

ということになります。

妻は「できれば家にピアノが欲しい」と言っていたものの、マンション住まいでは自由に音が出せないこと、音量が絞れる電子ピアノが現実的であることに理解を示し、電子ピアノでも上級機種なら納得できるかもというわけで、ゴールデンウィークは楽器屋さん巡りをして実物にいろいろ触れてきました。(余談ながら某楽器店で触れさせてもらったベーゼンドルファーの澄み渡る美音には感動してしまいました・・・ポルシェ911が買えるくらいのお値段でしたが)

さて、上記項目の観点でピアノを探すとハイブリッド・ピアノというものがニーズにピッタリではありませんか。ハイブリッド・ピアノをラインナップしているのは今のところヤマハとカシオ。いずれも目指すところはグランド・ピアノのタッチで、ヤマハは鍵盤からハンマーまでの構造はグランド・ピアノそのものの凝った造りになっています。カシオもハンマーを動かす構造になっているものの、やや簡略化しているようです。

話はピアノ選びの情報収集の段階に遡ります。

調べてみるとアコースティック・ピアノが良いか、電子ピアノが良いか、はたまたハイブリッド・ピアノが良いかというQ&Aや議論はネット上で結構多く見つけることができます。そこで見かける断定調で回答している人たちを見てなんか既視感があるなあと思ったら、その論調がオーヲタ(オーディオ・オタク)そっくりなんですね。なんというか原理主義的で、理想論と、理論ばかり語って、アコースティック・ピアノと電子ピアノで迷っている人を「電子ピアノなんて話にならない。本物のピアノでないと」などと威圧的にモノを言っているわけです。もちろん、知識のない人に電子ピアノの至らない点を情報として提示しているのは良いことでしょう。しかし、悪いところを強調するばかりの断定調の物言いに質問者の事情を推し量るムードは皆無で、ただ単に自分の理想論を押し付けているだけでしかない。

電子ピアノがアコースティック・ピアノより良くないなんて、んなこたあ、言われなくたって想像がつきますよ。ピアノ線をハンマーで叩くニュアンスが電子楽器で完全に再現できるわけがないことは、アコースティック・ギターを電子音で再現できないのと同じくらい当たり前のこと。でもアコースティック・ピアノの導入を躊躇う理由(価格、重量、大きさ、維持費など)がそれぞれにあるわけです。原理主義者が言っていることは確かに正しいんでしょう。でも、プロの演奏家をみんなが目指しているわけでもないのに理想論を振りかざすのはいかがなものかと思います。そういう人に言わせるとアコースティック・ピアノでもアップライトじゃあ話にならないう論調も少なくありません(ここは後でまた触れます)。

そのような原理主義者的な評価は本物のグランド・ピアノを基準としているので、電子ピアノの各メーカーが本物に近づける方向性は原理主義者の主張と一致しているという一面もあります。でも、例えばグランド・ピアノの鍵盤アクションの特徴であるレットオフ(穏やかに鍵盤を押し下げてゆくと途中で軽いひっかかりがある:誰にでもわかります)という挙動を擬似的に再現しているところなど、どこか本末転倒に思えるわけです。カワイのCA67/97は宣伝文句通りレットオフを作り出していますが、鍵盤そのもののタッチがアコースティック・ピアノに及んでいないのにレットオフだけ再現されていることに意味があるんでしょうか。ピアノ歴12年(子供のころに10年と30代後半に2年)でアップライト・ピアノ育ちの妻は、グランド・ピアノをたまに弾いたときにレットオフを意識したことはないそうです。レットオフは誰にでもわかりますと書きましたが、それはゆっくり鍵盤を押し下げたときの話で、音を出すために鍵盤を押したときにそれを感じ取ること(感じ取って演奏の表現に影響を与えること)ができるのは、ごく限られた、少なくとも音楽でお金を稼げるレベルの人だけでしょう。だから、レットオフの疑似再現を売りにするのは、原理主義的理屈を鵜呑みにするような人を納得させるためのマーケティング戦略のようにすら思えてしまうわけです。そのスペックが何をもたらすのか、本当にそれを使おうとしている人に影響があるのかという思考が抜けた、単に仕様を理屈だけで評価する人ってどこの世界にも居ますからね。

ピアノ選びの話に戻します。

そんなわけでカワイは鍵盤のタッチが言われているほど良いとは思えず、スピーカーからの音(サウンド、出どころ)も不自然でピアノっぽさがないので機種候補からはすぐに落ちました。

その他、触れる機会があったローランドのLX-17は、鍵盤に手応えがあってるもののタッチはやはり電子ピアノのそれで、しかし簡単に鍵盤の重さ、感度を変えられるところ、ピアノの音の自由度が高いところが魅力。ただし、お値段はおよそ45万円となかなかご立派。

カシオのGP-500は、ハンマーを組み込んで実際にそれを動かす構造になっているせいか、だいぶピアノに近い感触。しかし、完全に同じ構造を取っているわけではないせいかフィーリングが同じとまでは言えない感じ。それでも、個人的にはこれで十分かなあと思いました。3大(?)ピアノメーカーの音をサンプリングしてそれぞれの響きを楽しめるのは楽しいし、フレディ・マーキュリーのファンとしては彼が愛用していたベヒシュタインのロゴが入っているところは相当惹かれるものがあります。お値段はローランドほどでないもののおよそ38万円とこちらも電子ピアノとしてはなかなかご立派。下位モデルのGP-300はスピーカーなどの音源部のグレードが下がるだけで、大きな音で鳴らせないウチならこれで良いかなと思ったものの、つや消し木材の外観がお値段よりもだいぶ安っぽく見えるところが残念。部屋に置いてあれば存在感が大きいピアノだけに家具と同じようにインテリアとしての価値も、と考える人にとってこの差はかなり大きいです。カシオさん、上手いこと上位モデルに価値を持たせています。

尚、僕はメーカーやブランドには一切こだわりがないんですが、電子ピアノなんてなかった子供のころからピアノを弾いてきた妻は、ピアノ・メーカーではないローランドやカシオといったブランドにはかなり抵抗があるようであんまり前向きに検討してくれませんでした(苦笑)。まあ、オーディオに凝っている人がBluetoothスピーカーを買うときにANKERやELECOMブランドに抵抗があるのと似た感覚かもしれません。所有するのに自己満足って大事ですからね。

あとはヤマハのハイブリッド・ピアノ。先にも書いた通り、ハンマーまでの構造がアコースティック・ピアノと同じなので鍵盤のタッチはアコピそのもの。その先は電気処理になるので音の出方はもちろんアコースティック・ピアノと同じというわけには行かないはずで、楽器屋スタッフ曰く「やっぱり本物のピアノより音が綺麗に出ちゃいます」とのこと。まあ、でもここは仕方ないですね。あくまでも電子ピアノですから。ヤマハのハイブリッド・ピアノはグランド・ピアノのアクションを再現したN1(およびN2、N3Xのシリーズ)と、アップライト・ピアノを再現したNU1があります。N1の方がタッチが良く、弾きやすいので思わず欲しくなりますがお値段はおよそ70万円。電子ピアノにそこまで払う価値があるのかという思いは拭えません。一方のNU1は電子ピアノとしては高価ではあるものの、前述のローランドLX-17とほぼ同等、カシオGP-500と較べてもほんの少し高いくらいという普通の(?)電子ピアノ上位モデル価格帯。結局、先に書いた5つの要求条件を一番満たしていること、妻が試弾してピアノのフィーリングに近くて良いと評価したことから、このモデルを選ぶことになりました。

このNU1という機種、ネットでは結構叩かれています。褒めたり推奨したりしているコメントはあまり見かけません。そもそもピアノとはグランド・ピアノのこと。アップライトは妥協の産物に過ぎない。構造上、レットオッフがなく、高速連打ができない、つまり鍵盤のタッチと特性がグランドと違うから正しいピアノの感覚が身に付かないということらしい。そんな妥協の産物であるアップライトの構造を電子ピアノで再現することに何の意味があるのか、というわけです。

あのぉ、小曽根真はバークリー音楽院のアップライト・ピアノしか置けない狭い練習部屋で「ここで良く練習をした」とテレビで言ってました(バークリーのWebサイトを見るとそのような小部屋がたくさんあるように見える)し、後にショパン・コンクール優勝&各部門を総ナメにしたラファウ・ブレハッチは家にアップライト・ピアノしかなく、それでピアノ演奏を身に付けて浜松国際ピアノコンクールで2位に入賞した(その賞金でようやくグランド・ピアノを買った)ことは有名な話ですよね。アップライトはスペースやコストの面で妥協の産物で、厳密に言えば鍵盤のタッチもグランドとは違うかもしれませんけど、ピアノとして別物でまるで欠陥品かのようなモノ言いで正しい技術が身に付かないみたいな論調を展開している人って一体どんなピアノ名人なんでしょう?そもそも、アップライトじゃダメってどういう弾き手のレベルを想定した意見なんでしょう?理屈だけでモノを言っている頭でっかちで教条主義者的な論調、オーヲタにホントよく似ていて困ったものです。「こだわりがある」ことを主張したいのなら、辞書で「こだわる」の意味を調べていただだいた方がよろしいかと。偉そうな物言いをする人にすぐひれ伏しちゃうタイプの人は、原理主義者の影響を受けすぎない方が良いと思いますね。

ちなみに、ピアノの先生にも実際にN1とNU1を軽く目の前で試弾してもらったところ、「N1の方が滑らかで弾きやすくていい。NU1はちょっと手応えがありすぎるかも。でも(趣味でやるのなら)NU1で十分」という感想で、ウチの用途では何の不足もないとお墨付きをいただきました。もちろんピアノ歴12年の妻が練習することを想定してのコメントです。

メーカーやモデルによる違いに限らず、そもそもすべてのアコースティック・ピアノはタッチ(と響き)がそれぞれに違うものです。同じピアノでも調律師の仕立てによっても結構大きく変わるわけで、ピアノ歴4週間の僕でも10秒でわかるくらいそれぞれに感覚が違う。グランドかアップライトか、という違い以前に個体によってまるで違うもの、それがアコースティック・ピアノなわけです。それでも、電子ピアノにはなく、グランドとアップライトの広い括りで共通するアコースティック・ピアノにしかないフィーリングというのは確実にあります。前述の通り、グランドのタッチじゃなきゃ、とか細かいところに固執するのは木を見て森を見ていないようなもので、ハンマーを動かしていると実感できるアコースティックならではの鍵盤のタッチ(とピアノに近い響きが再現できていること)が重要であると考える僕には、NU1は現時点で最適なピアノだと思っています。ついでに言うと、高級感と品のあるデザインはすべての電子ピアノの中でも最上の部類に入ると思っていて、家具のひとつとして見ても満足度が高いです。尚、本当はヤマハにはトランスアコースティック・ピアノという、音量を絞れるアップライト・ピアノが存在するんですが、さすがに大台超えのお値段とあってそこまで一気に行く勇気はありませんでした。いずれ、「やはり本物のピアノでないと」と思うようになったら検討することもあるかもしれませんが。

とはいえ、こんな立派なもの(=これが生まれて初めて自分で買った楽器)を手に入れてしまった以上、「やっぱりピアノは大変だからやーめた」というわけにはいかなくなりました。ある意味、自分を追い込んでしまったかも。でも、ピアノを習い始めてから、たとえ簡単な曲であっても自分の指から音楽が出てくることが楽しくて、続けられそうな直感があったのであまり躊躇しなかったですね。もとから妻がピアノが欲しいと言っていたこともありますが、自分の意思で突き進んでいます。あとは練習あるのみ!

該当の記事は見つかりませんでした。