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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

One Step Beyond / Jackie MacLean

One Step Beyond-201505

ちょっとご無沙汰気味のジャズ。ひさびさに選んでみたのがこの1枚。

恐らく、初心者向けガイドブックに登場することはであろうジャッキー・マクリーンのこのアルバムの録音は63年4月30日。

63年というと既にコルトレーンは黄金のカルテットを始動して独自の世界に突入していた時代で、ジャズ・ミュージシャンたちが揃って「ハードバップの次」を模索していた時代。今、一般の人たちがイメージするジャズは50年代のハードバップ時代のサウンドで、誰が聴いてもああジャズだなあ、と思える安心感のあるサウンドであると言える(だからこそ今でも広く聴かれているのでしょう)。言い方を変えればハードバップはジャズに詳しくない人でも実はなんとなくそのサウンドを知っているわけです。

しかし、60年代に入ってジャズは新しいサウンドを求め、マイルスもコルトレーンも先鋭化し、オーネット・コールマンも登場するなど、ジャズにとって一番面白い時代だったと個人的には思う。でも、この時代の尖ったジャズが今顧みられることはほとんどない。

ジャッキー・マクリーンはコルトレーンやオーネット・コールマンに影響を受け、新しいサウンドを模索したが、当時も今も彼らほどには高く評価されていないのは明らか。未だにマクリーンと言えば"Left Alone" "What's New"を取り上げる人が多いのはひとえに音楽家・マクリーンが評価されていないからと言えるでしょう。まあ、同時代の誰かの影響を受けて、という点で一段低く見る人の気持ちはわからなくはありませんが。

マクリーンのチャレンジが明らかになってきたのは「Let Freedom Ring」(62年録音)あたりから。このアルバムはまだ新しいことをしたいという意欲が空回りしている感があるけれど、63年以降はうまく消化できるようになり、なかなか先進的なサウンドを聴かせるようになってくる。この頃のマクリーンが一番カッコイイ。ジャズはカッコ良くなければ意味がないと考える僕にとって、カッコイイことは重要だ。

特にピアノレスでヴィブラフォンをフィーチャーしたこの「One Step Beyond」は傑作。クールなエネルギーに溢れている。共演のモンカー3世、ボビー・ハッチャーソンのパフォーマンスもフレッシュでグループとして良い意味で同じ方向を向いているのも素晴らしい。「Destination Out」「Action」も同じ路線でクール、そしてアヴァンギャルドには向かっていないのに先鋭的でスタリッシュ。今も昔もこれに似たようなサウンドはなく、評価されていないのは不当だと僕は思う。63年の時点で考えるとマイルス・デイヴィスのグループよりもサウンドは先進的なのだからもっと評価されてもいいんじゃないだろうか。

「One Step Beyond」(意欲がタイトルに現れているでしょう?)に関してのトピックは、サウンドの一翼を新人トニー・ウィリアムスが担っていること。当時まだ17歳と4ヶ月という年齢で、既に完成されたテクニックを持っていることに驚かされる。1曲めからドラム・ソロがあるけれど、テクニック的に非凡なだけでなく、叩きすぎずに抑えが効いた知性があるところなどは更に驚異的で、舌を巻くとはまさにこういうところで使う言葉なんだな、と思わされる。

マクリーンはトニーを彼の地元ボストンでスカウトし、まだ少年だった息子を心配する両親に「自分が面倒を見ますから」と説得してニューヨークに連れて行った。すぐにマイルス・デイヴィスに引きぬかれてしまい、ハービー・ハンコックとウェイン・ショーターを加えたマイルス・グループは更に進んだサウンドでアコースティック・ジャズの頂点を極めた。そのサウンドもトニーの存在があったからこそであることは衆目の一致するところ。

というわけで、有線放送でかかるジャズとは異色であり一般的なサウンドではないかもしれないけれど、ジャズを聴くなら是非こういう意欲的なものを是非聴いていただきたいと思う。ジャズがムーディでオシャレなんていう概念なんて吹っ飛ぶこと請け合いだ。

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