FC2ブログ

Enjoy Life, Enjoy Hobby

趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

お風呂のお供にBluetoothスピーカー JBL Charge2+

JBLCharge2p-1

僕のBluetoothスピーカー使用は、BOSE SoundLink Bluetooth Mobile speakerに始まり、BOSE SoundLink Mini、そしてSONY SRS-X33と推移してきた。現在手元にあるのはSRS-X33のみ。そしてこの度、JBL Charge2+を使いはじめるようになった。

本題に入る前に、巷に溢れるBluetoothスピーカーのレビューについて思うところを。

Bluetoothスピーカーは今や百家繚乱の様相を呈していて、サイズ、音質、価格もさまざまなものが揃っている。そしてユーザーはといえば、家にコンポもなくてスマホのスピーカーよりももう少し良い音で聴けたらいいなという人から、本格的なコンポの代替品として高音質を求める人まで幅が広い。また、持ち運びを前提にする人がいれば、サイズが小さくても据え置き前提の人もいる。求められている用途がこれほどバラついていながら同じカテゴリーの機器として一括りに情報が扱われている商品はちょっと珍しいように思う。

結果的に、良い製品であっても思っていたものと違うことを理由に酷評する人や、それほど高音質でないものでも元の期待値が低いがために絶賛している人が少なからず見受けられ、ネットに溢れるレビューは玉石混淆な状態になってしまっているわけです。要は、オーディオ機器としてのとしての客観的な音質評価ではなく、期待や自分の用途に合っているかどうかだけが評価基準になっている。売れ筋製品は2万円台前半以下という手を出しやすい価格帯なので多くの人が手にしやすく、ユーザー層が広くなっていることも評価のバラつきが大きい要因のひとつでしょう。

BOSEの評価が大変高いのは、誤解を恐れずに言えば、それまでオーディオ機器にあまり触れたことがないような人が多いからだと思います。BOSEという名前は一般の方に「高級オーディオ機器」ブランドとして広く知れ渡っていて、まずそのBOSEを手にしたという満足感がレビューに上乗せされてしまう。更にSoundLink Miniのように小さなスピーカーから厚みのある低音が出てくるとそれだけで、それまでオーディオに縁がなかった人は「わあ、すごい」と思ってしまう(確かにアレはすごいんだけどね)。しかし、BOSEの中でもとりわけ小型スピーカーの音質は非常に癖が強いものが多い。内部構造の工夫であれだけの低音を稼ぐ技術は大したもので、一方でその低音に埋もれる中高音は解像度がそれほど高くない。また、よく言われている「すごい低音」は実は中低音であってローエンド(極低音域)はあまり出ていない。そういった特性をDSP処理などの電気的処理で補うことをあまりせず、アコースティックな構造で基本的な音作りをしているところがBOSEたる所以でしょう。結果的に、音の広がりに欠け、解像度が低いコモリ気味な音質になっている。これはオーディオ機器の性能としては褒められたものではない。ところが、あまり音量を上げずにBGMとして流す場合には、主に中低音がもたらす音(や声)の実体感がありながら聴き疲れしないという特性があり、音数が多くないシンプルな楽器編成におけるヴォーカルやピアノの音を自然でまろやかに聴かせるところあたりは、他のメーカーの音作りにはないBOSEならではの独特の音世界がある。このような特性がオーディオ慣れしていない人には新鮮でウケている理由になっているように思うわけです(一方でオーディオ・マニアはこういう特性をもってBOSEを初心者向けと決めつける傾向が強く、ポリシーを持った製品を一貫して作っているBOSEに共感できないからといって、見下すのもいかがなものかとも思う)。

一方でSONY SRS-X33はどうかと言うと、このサイズにしては十分な低音が出ているし、中高音の情報量も多い。しかし、BOSE SoundLink Miniと比べると、特に中低音=ベースあたりの音域の量感は圧倒的に少なく、その代わりに中高音の情報量と解像度が遥かに上で、それでいながらシャリついた感じも少ない。また、ローエンド(極低音域)はこのサイズと思えないところからしっかりと出ていてその点ではBOSE SoundLink Miniよりも優っているほど。こちらはDSP的な仕掛けによりFレンジが広くてバランスが良く、音がクリア、サイズを超えた広がりのある音場(Soundボタンで更に広がる)を実現しており、オーディオ的なパフォーマンスという観点では上であることから、僕はこのスピーカーを愛用してきたというわけです。ちなみに、SRS-X33のレビューで「低音が出過ぎる」と「低音が足りない」という真逆のコメントが見られるのは前述のような低音域の鳴り方をしていて、レビュアーによって低音を意味するところが違うことが理由のひとつ。また、「出すぎる」という人はそもそも小型スピーカーに低音をまったく求めていないからとういう理由がもうひとつ。美容院のBGMのように薄い存在感で音楽が流れてくれれば良いという人は、ベースやコントラバスの響きはむしろ耳障りだと感じてしまうようです。

このように製品による性格の違いが大きく、ユーザーが求める要素も大きく違っていて、その人の立ち位置によって同じ製品でも評価が大きく変わってしまうわけです。レビュアーが何を求めているかがわからないとその人の評価を読み解けないので、このような長い前置きとなりました。以下、ようやく本題に入ります。

BOSE SoundLink MiniとSONY SRS-X33の比較記事で書いた(http://buhaina.blog.fc2.com/blog-entry-161.html)通り、僕のBluetoothスピーカー使用目的は、第1に旅行や出張のときに滞在先の部屋である程度良い音で音楽を聴くことにある。よって、1泊~数泊の荷物に入れ込んで気軽に持ち出すことができるサイズと重さであることが必須条件です。僕は音楽において低音はとても重要だと思っているので低音の厚みがあることは外せないポイントで、宿泊先であまり音量を上げることもできない環境であってもある程度の低音を実感できるスピーカーであることが音質面の必須条件となっています。どこでも持ち運べるという製品の性質上、ついでにこういう用途でも使えるということで、入浴中や洗車中のBGM用としても使ってはいるものの、やはり第1の目的が本来の目的であり、その用途においてSONY SRS-X33は今でも特に不満は見当たりません。

ところが、実際の頻度としては入浴中のBGM用途が断然多い。そりゃそうだ。毎日のことなんだから。とはいえ、入浴中に使うといってもドアの外に置いてスリット状の通気口から漏れ聞こえてくる音を聴いているだけなので「一応聴こえています」という状態でしかなく、だから防水スピーカーはずっと頭の隅にひっかかっていた。そして、店頭でなかなか良い音を聴かせていたJBL Charge2+が防水であることを知り、購入してみたというわけです。

【サイズ比較】
JBL Charge2+の重さは実測615gで、BOSE SoundLink Mini(実測670g)、SRS-X33が(実測705g)と比較すると軽い。一方で、SoundLink MiniやSRS-X33よりもやや大きく、筒状のデザインであるため、鞄に目一杯荷物を詰め込みたいときに収まりは若干悪いかもしれない。また、やや引っ込んではいるものの両サイドのパッシブ・ラジエーター部が外に面しているため、荷物と一緒にカバンにギュウギュウに詰め込む場合には損傷しないよう気を使う必要もありそう。

JBLCharge2p-2
JBLCharge2p-3

【音質】
極低音 SRS-X33 > SoundLink Mini = Charge2+ (大太鼓のような地響きの音域)
中低音 SoundLink Mini >>> Charge2+ > SRS-X33 (ベース、コントラバス)
中音 Charge2+ > SRS-X33 > SoundLink Mini (ヴォーカル、ギター、木管、ホルン)
中高音 SRS-X33 > Charge2+ > SoundLink Mini (トランペット、ヴァイオリン)
高音 SRS-X33 > Chage2+ >> SoundLink Mini (シンバル、金物系)
音の広がり SRS-X33 > Charge2+ > SoundLink Mini

上記は音質の特徴を示したものであり、左側に名前が寄っている機種が即ち優れたスピーカーという意味ではありません。また、SoundLink Miniはもう手放しているので記憶の中での比較として参考に留めてください。以下、SRS-X33(発売1年でもう製造中止になっていますが・・・)との比較です。

音のクリアさ(=Hi-Fi)と広がりはSRS-X33の方が明らかに上で、地響き的な低音の再生力も上。スピーカーとしての総合力では今でも3モデルの中でもっとも優れていて、改めてこのサイズでよくぞここまで頑張ったと感心します。Charge2+はそこまでHi-Fiでないにしても音のクリアさに不足感はなく、ベース、ギター、管楽器の音が前面に出てくるところが特徴。管楽器の艶や弦楽器の柔らかみのある美しさ、ヴォーカルの温かみの表現に優れていて、音の自然さではこちらに軍配を上げる人が多いような気がします。シンバルやハイハットが、SRS-X33と比べるとやや引っ込むかと思えばチリン、シャリンという金属系や高音系のパーカッションが前に出たりするという鳴り方もする。このあたりの表現の違いは上記のような単純な比較表で表せないところであり、個性の違いが面白いところでもあります。これは完全に個人的な感覚かつ好みの話になりますが、音がナチュラルで心地よく響くJBL Charge2+の方がSRS-X33よりも音楽を音楽らしく楽しめるサウンド作りになっているように思います。ちなみに、音質に関心ない妻が脇で聴いていて、SoundLink Mini → SRS-X33に変わったときは「音が良くなったね」とすぐにわかりましたが、Charge2+に変えた後にはレベル的にあまり違いを感じなかったようで十分良い音がすると言っています。

Charge2+は、形状的に音の広がりに期待したいところではあったものの、その点はイマイチでBOSE SoundLink Miniほど単焦点的ではないにしてもステレオ的な広がりはあまりなく(実際モノラルのはず)、横にリスニング・ポジションをずらすと音の聴こえ方が少し変わります。もっとも、このサイズで広い音場感を望むのはお門違いで、用途によっては拡散してほしくないケースもあるので必ずしも悪いということではないでしょう。

購入目的であった浴室での鳴りはどうか。音が反響しやすいく狭いスペースでのリスニングなので、音の広がり感への不満は感じなくなります。そして当たり前ながら、それまで浴室の外にスピーカーを置いて聴いていたのとは大違いで音がとても明瞭。ピアノの音はうまく響いてくれて予想外にリッチな音に聴こえてくるというメリットも。あくまでもBGM用途なわけですから、この程度の解像度で十分納得できます。購入の目的は期待以上のレベルで達成できました(ここ、重要ですね)。

洗車時(洗車スプレーがジャージャーとうるさい環境の屋外使用)のBGM用途にも悪くない。ノイズが多い屋外ではSONY SRS-X33が得意とする地響き系の低音はマスクされてしまい、中低音がそれほど豊かでないことから鳴りっぷりに不足感を抱かせるものでしたが、JBL Chage2+だとその不足感が若干改善される感じ(とはいえ、この用途ではSoundLink Miniがベスト)。また、SRS-X33はデザインや表面の材質もインドア想定でお上品にできているために地面に直置きすることが憚られるんだけれども、Charge2+だと大雑把にバンと置いても気にならない大らかさがあって、屋外ユースに向いているキャラクターであるところも特徴だと言えるでしょう。

【その他】
Charge2+の良いところとして、小さいながら右側に脚が付いているように縦置きでも使ってもほとんど問題ない(もともとモノラルでステレオ感がないので置き方に寛大である)こと、本体側で一時停止(通話ボタン1回押し)と曲送り(同2回押し)ができること、バッテリー残量がわかりやすい(5段階で表示され、充電中もどこまで蓄電されたかを表示する)、バッテリーは僕の使い方だと20時間以上は持ちそう(SoundLink miniやSRS-X33より断然長時間)であることを挙げておきます。カラー・バリエーションの多さと、ちゃんとデザインされたACアダプター&USBケーブルも遊び心があっていいです。総合的に見ると、とにかく低音がズンズン言って欲しい、あるいは逆に低音は要らないという人以外にはバランスが取れた良いスピーカーじゃないでしょうか。もうひと回り小さくなってくれれば、この価格の製品としては言うことなし。お風呂で音楽、思っていた以上に楽しいです。

バレンボイム指揮 シュターツカペレ・ベルリン 2016年来日公演

バレンボイム201602
バレンボイム指揮 シュターツカペレ・ベルリン
2016年2月14日
サントリーホール
【演目】
ブルックナー 交響曲第5番

なんにしても驚きの企画、ブルックナー・チクルスを敢行するバレンボイムとシュターツカペレ・ベルリン。しかも、5番、7番、8番以外の日はモーツァルトのピアノ協奏曲の弾き振りまで演ってしまう。バレンボイムというのは、好き嫌いはともかく、並外れた才能の持ち主であることに疑いはないでしょう。本当は全部行けるものなら行たかったけれどさすがにそうはいかず、休日に聴けて海外オケで聴く機会もそう多くはないであろう5番の日に決めた。

今回は初めてステージ真横の席(LA)を選んでみた。コンサート通いをしていた初期には、真横だと音のバランスが大きく崩れるんじゃないかと勝手に思っていたから、遠くてもできるだけ正面の席を選び続けいていた。ところが、昨年6月にベルリンのフィルハーモニー・ホールで真横というか斜め後ろから観る機会があり、音の響きにほとんど問題がないと感じてから考えが一変。オケが近くに見えて、しかも見渡せるから誰が何をしているのかが一目瞭然な上になんといっても音が近いところがむしろ魅力的。そんな経緯があり、ここサントリーホールでも初めてLA席を選んでみたというわけです。予想通り、見ても聴いても楽しめる席で、1階席(特に前の方だと管楽器奏者がほとんど見えなくて音が上に抜けていく感じがある)よりもずっと良いと個人的には思う。

その席は、ホールの客席全体を見渡すにも好都合な場所で、この日着席して驚いたのが空席だらけであること。感覚的には6割に満たないのではという入りで、こんなに寂しいサントリーホールは初めて見た。日曜日のマチネでブルックナーの5番だけというプログラム、バレンボイムとSKBではお客さんが呼べないということなんだろうか? 冷静に考えると、ブルックナー・チクルスという企画は特にここ日本では無謀だったかもしれない。ブルックナーが好きといっても全部観に行く人は稀だろうから、そうなると人気のある4、7、8、9番あたりに集中することになってしまう。これが、よくあるオケの日本ツアーのようにさまざまな作曲家を取り上げたいくつかのプログラムのひとつであればこの日のチケットの売れ行きは大きく違っていたに違いない。それはある程度予想できることでもあっただろうことを考えると、演奏者、主催者、スポンサーが「それでもチクルスをやるんだ」と決断したことに拍手を送りたい気分になる。

アメリカのオケと違って開演前にステージに楽団員は皆無。時間になってゾロゾロと出てくると管楽器奏者がやたらと多い。ナント、倍管編成になっている。金管も木管も指定の2倍、ティンパニも2人。よってステージ上の眺めは壮観。

コントラバスのピチカートで静かに始まる交響曲第5番は、最初の聴かせどころの合奏に入るとオケが雄叫びを上げる。この掴みだけでオケの実力が十分伝わってくる。倍管の影響もあって迫力満点。倍管なので一人一人が力んで大きい音を出す必要もないから音の厚みに無理がない。そして弦がまた負けずによく歌う。この弦の鳴りがあるからこその倍管編成という印象すら漂ってくる。ホルンは3人+5人の2列で第3楽章までは5人のみで、最終楽章で4人+4人の列に変わり8人で演奏して音の厚みを出していた(2列で役割分担があったようにも聴こえたがよくわからず)。ティンパニは同じフレーズを2人で打つのではなく、基本的には第1奏者のみでの演奏。合奏で強めで連打しているところから急に静かに切り替わってティンパニも弱く叩き変えないといけないところで、強い音の第1ティンパニをミュートで止めて、弱い音を第2ティンパニで引き継ぐことで不要な響きを持たせないようにするためだけに贅沢に2人を使っているように見えた(フィナーレは2人で同時連打)。今回の席からは、指揮者の動きはもちろんのこと、これら各楽器の動きがハッキリと見えて曲の構成がとてもよくわかったところもすごく面白かったところ。尚、テンポ設定はベルリン・フィルとのCDと似た印象で早めのところは推進力を重視した印象。それでも、第4楽章のフィナーレはぐっとペースを落としてスケールの大きさを前面に押し出したものだった。

何にしても圧巻の演奏で、どのパートもレベルが高く、オケとしてのまとまりも言うことなし。聴き惚れてしまう繊細な音から荒々しい(しかし粗さを微塵も感じさせない)壮大なトゥッティまで表現の幅の広さにも唸ってしまう。歌劇場オケと思って聴く前にハードルを上げていなかったせいもあるとはいえ、一級品の演奏を聴いたという充足感はかなりのもの。こういう鳴り方、歌い方、彫りの深い音の構築美、そしてただ上手いだけではない音の主張というあたりは残念ながら日本のオケには望めない。こんなに素晴らしい演奏でブルックナーの5番を聴ける機会はそう多くはないんじゃないだろうか。それなのに半分しかオーディエンスがいないとは。しかし、曲が終わると5秒ほどの静寂をおいてからの嵐のような拍手が起きていたことが、この日のコンサートの素晴らしさを物語っていたと思う。オケのメンバーの表情は清々しく、しかし「望外に素晴らしい演奏ができた」的な達成感というよりは、マエストロも含めて「いつも通りうまくやったのさ」という感じで余裕があるようにすら見えたのがまた印象的だった。

バレンボイム指揮 シュターツカペレ・ベルリン
2016年2月15日
サントリーホール
【演目】
モーツァルト ピアノ協奏曲第22番(バレンボイム弾き振り)
ブルックナー 交響曲第6番

前日があまりにも素晴らしかったため、更に聴く機会が少なく、平日でチケットがより残っているであろう翌15日の第6番も行ってしまった。客の入りは昨日よりも多いとはいえ7割にも満たないといったところ。

この日はまずはモーツァルトのピアノ協奏曲第22番から。この曲もまた、ブルックナーの6番と同じようにモーツァルトのピアノ協奏曲の中ではやや渋めの選曲。初めて生で聴くモーツァルトのピアノ協奏曲は軽快でとても心地よい。昨日、重厚な響きを聴かせていたオケは、軽やかなこの曲でもとても気持ちよく歌っていてやはり実力の確かさを感じる。ただし、これまでテレビで観てきたのと同様にピアニスト:バレンボイムは独特なリズム感と揺らし方に個性があって、あんまり印象が良くない。曲も正直なところそれほど面白くなくて眠くなってしまった。これまであまりモーツァルトは聴いてきていないので、まだ良さを僕が理解できていないということなんでしょう。
(追記: 後日家にある内田光子の22番を改めてじっくり聴いてみたら、素晴らしい曲でした。ああ、やっぱり予習はちゃんとやっておくべき)

休憩後のステージは、前日とは違って管楽器も標準編成。そもそも、同じオーケストラで同じ作曲家の演奏を2日連続で聴くという経験は初めてのことで、当たり前のことながら同じサウンドがちゃんと聴こえてきたところに感心する(金管、木管の顔ぶれは結構違っていたけれど)。演奏のレベルは前日に引き続き素晴らしい。でも、昨日のような凄みまでには到達していなかったように感じた。それは2日続けて聴いたからオケの音の予想がついてしまっていた(新鮮味が薄くなった)ことと、曲が異なり狙った方向性が違っていただろうということも理由ではあったと思うけれど、オーディエンスの熱狂が前日の方がずっと凄かったことを考えるとパフォーマンスが聴き手に与えたインパクトにはやはり差があったということでしょう。

でも行って後悔はしているわけではない。演奏はこの日も良かった。ただ前日の衝撃が凄すぎたというだけのこと。特にゆったりと謳わせた第2楽章のスケールの大きさと美しさはとても感動的で、生で聴けて良かった言えるものだった。このレベルの演奏で6番を聴けて本当に素晴らしい体験ができたと思う。

年明けのムーティCSOに続き、素晴らしい演奏を続けて聴くことができた幸運に感謝!

ジャガーXE ついに納車-1000キロ走ってみて

Jaguar201602-1

(第2回めのレポートはこちら http://buhaina.blog.fc2.com/blog-entry-242.html

9月末にオーダーしたジャガーXEが1月30日、ついに納車されました。18色のボディカラーを筆頭に内外装の選択肢が非常に多く、自分好みにそれらを選ぶ楽しみ(自分で仕様を選ぶと注文してから生産待ちの行列に並ぶことになる)と引き換えに当初から納車は2月以降になるのでは?と言われていただけに少しだけでも早まったのは嬉しい。セールス曰く期待ほどには引き合いがないらしいとのことなので興味を持っている人は多くはないでしょうが、その分情報も少ないと思うので、街中、高速道路、山道など一通りを1000キロほど走ったファースト・インプレッションをたっぷりと書いてみたいと思います。購入を検討している方の参考になれば幸いです。

ただし、これまでの車歴がユーノス・ロードスター、アルファロメオ156、アルファロメオ・ミトというラインナップ(すべてマニュアル・シフト)の通り、僕は高級感よりもクルマを操る面白さを追い求めたクルマ選びをしてきました。だから、プレミアム感を売りにする他のDセグメント車(Cクラス、3シリーズ、A4、レクサスISなど)と比較してどうだこうだという有効な情報を出すことはできそうにありません。まあ、156は当時3シリーズのライバル扱いだったのでDセグメントだったのかもしれませんが、プレミアム系ブランドが下のカテゴリーに進出するのに合わせてDセグメントがどんどん高級大型化している今となってはもう同じクラスとは言えません。XEはレクサスGSとほぼ同等、クラウン・マジェスタとの比較でも全長が-15ミリで全幅は+50ミリというサイズですから、日本においては立派な大型車と言えるでしょう。小型車好きを公言してきた僕がまさかクラウンほどのサイズのクルマを所有することになるとは・・・ということはさておき、以下の内容は積極的なドライビングを好む小型車愛好家による視点によるものと理解しておいてください。

オーダーしたXEの仕様は、グレードがプレステージ、オプションとしてブルーファイヤーのボディカラー、ラテの内装、サテンアッシュバールのウッドパネル、アクティブ・ダイナミクス(スポーツ・サスペンションのセット・オプション)、19インチのVENOMホイールのシルバー(19インチを選ぶと後輪タイヤ幅がワイドになる)いうものです。

Jaguar201602-2

エクステリアのデザインは、エレガントかつスポーティ。そしてそれらがやや控えめな主張であるところが気に入っていいます。ドイツ車とはその点、明らかに違う。付け加えるならこの控えめな上質感は、写真ではなく実車を目の前にしないとなかなか伝わりにくい。期待ほど引き合いがないのは、Dセグメントに参入したことがあまり広く知られていない(加えて販売ネットワークが弱い)ことだけでなく、この慎ましい佇まいが理由のような気がします。既にあるマーケットのシェアをもぎ取ろうということであれば、10年前くらいにイメージを一新したアウディのようにクルマにそれほど関心がない人にも目を向けさせる思い切ったデザイン(近年のアウディが落ち着いてきたのはメルセデスやBMWに肩を並べたという自信の現れ、とは水野和敏氏の言葉)を採った方が良いのでしょうが、そうしていないのはジャガーのアイデンティティとしてエレガントさにこだわったということかもしれません。ある程度売れて人目に付く機会が増えれば「いいね」と思う人がもう少し増えるんじゃないでしょうか。そのルックスについて細かく言うと、特にフロントからサイドへの麗しい流れ、Cピラーの根元あたりのヒップラインの穏やかな曲線、深さが微妙に変化しているサイドのキャラクターラインあたりはエレガントとスポーティのバランスにおけるひとつの模範解答なのではないかと思えるくらい魅力的。リヤビューは、クリーンでスッキリしているものの、やや個性不足であることは否めない。F-TYPEのようにテールランプの縦幅をもう少し薄くしてイメージを近づけるなどして他社と差別化を図ってほしかったものです(テールにボリューム感があるので薄くなるとバランスを取るのが難しいんでしょう)。一方でイメージとちょっと違っていたのは斜め後方から遠目に見ると少し腰高感があるところ。実際、トランクリッド上端は結構な高さ(ゆえにルームミラーからは真後ろを走るクルマのヘッドライトが見えない)でダックテール形状になっていることも含めて空力や荷室容量などを考えながらバランスさせた結果のデザインなのでしょう。一際目立つ大きなエンブレムとJAGUARの文字がトランクリッド後方に付いているのはメーカー自身が「足りないモノ」と「まだイメージを構築できていないこと」を自覚した自信のなさの現れでもあります(エンブレムさえ付けてしまえば瞬時にわかる知名度があるからこそ採れる手法でもありますが)。

ちなみに、驚いたのがエンジンフードを開けたときにエンジンがずいぶんと出っ張って見えたこと。真横から見ると下の写真のようになっていて、「これで本当に閉まるの?」とさえ思ってしまう。ボンネット高を抑えるべく相対的に高い位置に来るエンジンをうまく収めているのと同時に、フードを閉めてしまえば外見からはボンネットの膨らみを感じさせないデザインのマジックを感じるところです。

Jaguar201602-4

少し若さを狙って選んだボディカラーのブルーファイヤー(僕のオーダー後に発表された錦織エディションと同色)は写真やカタログとの違和感のない同じくらいの色合い。少し濃いブルーで、そうかと言ってダークブルーと呼ぶほど暗くはない。やや濃い目のカラーである分、メッキのサイドマーカーの輝きが映えるし、プレステージ・グレードはサイド・ウィンドウのモールもメッキになるので光モノとのバランスは良好です。ブルーメタリックの塗装は、明るいところで見たときにはスポーティで若々しさがあり、薄暗い場面で見たときにはクールで落ち着いた雰囲気があるなど光の当たり方によってイメージに多面性があるところも魅力的(カタログのカラーサンプルのグラデーションは明るいときと暗い時の見え方の違いを表現しているものと思われる)。19インチホイールはやはり足元の存在感が増してスポーティなムードを上乗せする外見的なイメージアップに効いています。

Jaguar201602-3

インテリアは革シートなどの内装は価格相応の納得感はあるように思います。インパネ周りはシンプルでデザインはスッキリしていて、それでいながらラウンド形状を持たせたり外側のエアコンのルーバーが乗車時に目立つようなデザインになっていたりするなど、事務的にならないような工夫がされている。とはいえ、思わずハッとするというほど印象的ではなく、また世評でも言われている通り質感はそこそこという印象。高級感という意味ではCクラスよりは1ランク落ちると言わざるを得ません。まあ、僕は運転席に座ったときの雰囲気が良ければいいというタイプで、ポートフォリオ以上のグレードで採用されているダッシュボードの革張りにもそれほど魅力を感じていないくらいなのでこの程度の質感で十分です。装備は、恐らくライバルと遜色がないくらいのレベルにはあるんじゃないでしょうか。電動格納式ドアミラーやパワーシートを装備するクルマすら所有したことがない僕にとってはもうお腹いっぱい。というか、未だにシート調整くらい手でよっこらしょとやればいいじゃんと思っている人間なので完全にトゥーマッチ。まあ贅沢なギミックがいっぱい付いているな、という身の丈に合っていない感は拭えません(苦笑)。シートはミトほどではないものの大柄で167センチ62キロの僕にはガバガバ。革の感触が良く、長時間座っていても疲れませんが、横Gや減速Gがやや強くなると簡単にズルっ体が滑るのでスポーツ走行には不向きです。オプションで選べる(ポートフォリオ以上では標準でピュアやR-Sportでは選べない)14ウェイ・パワーシートでサイドサポート幅の調整ができることを今になって知り、選ばなかったことを後悔しています。インテリアにもう少しナチュラルな温もり感が欲しいと思って選んだウッドのオーナメントパネル(プレステージ標準はブラッシュドアルミ)は、前方をぐるっと取り囲んではいるものの、上下の幅が狭いだけでなく下端側が後傾していて基本的には暗がりになる部分ゆえに、あくまでもちょっと雰囲気を変える程度のものという位置付けのオプション。それじゃあんまり意味がないのでは?と言うこともできるし、少し雰囲気を変えるためだけのものなのに12種類も用意されていてオーナーがこだわれることが粋だと言うこともできる。価格設定がそこそこですが安っぽさはありません。実はシフトダイヤル付近までそのパネルが貼られると知らずにオーダーしてしまい、ここがウッドパネルになったのは誤算でした(冷汗)。ウッドパネルというと昔のジャガーやローバーのいかにも英国調な内装イメージにつながるアイテムではあると思うものの、上記のように味付け的なものであり、今のジャガーのイメージだとオリジナルのアルミ&ピアノブラックの方がモダンで似合っているかもしれないと自分でも評価に迷うところです。

装備の中でなかなか良いのがオーディオ・システム。僕は自宅のオーディオには目一杯力を入れていますが、ノイズにまみれたクルマの中で良い音で聴こうとは思わないのでカーオーディオにはあまりクオリティを求めていません。しかし、XEは標準で(日本では家庭用にはコモディティ製品しか展開していないブランド)英国メリディアン製のシステムを奢っています。静寂性に優れた車内環境であることも手伝って音楽を味わえるサウンドで、サブウーファーも備えているために調整すれば迫力ある低音も出すことができるところが嬉しい(車内はノイズで低音がマスクされるので低音底上げは重要)し、タイトな音像も広がり感を要求する音もうまく表現できている音場表現の幅の広さも好印象。ロードノイズが大きいミトではクラシックを車中で聴こうなどとはこれまで露ほども思わなかったんだけれど、低速走行中の一般道や良い路面状態の高速道路のノイズくらいならオーケストラを聴いても良いかもと思わせてくれるようになったのはなかなか喜ばしいところで、カーオーディオへ要求度が高くない僕にとっては十分満足できる音質であると言えます。尚、音楽再生はCDはもちろん、iOSデバイス(僕の場合はiPod Touch。古いものは対応していないと取説にある)をUSB(センターのコンソールボックス内にポートがある)で接続すればオーディオ本体側で曲のブラウズからプレイヤーの操作まで可能。USBメモリーはFATまたはFAT32ファイルシステムにしか対応しておらず、exFATのWalkman AシリーズをUSBデバイスとして使用することはできませんでした。尚、USBメモリーだと曲のブラウズは当然フォルダー検索になります。Bluetooth接続は曲のブラウズ以外はオーディオ本体から操作(ステアリングのボタンでトラック送り/戻しも)可能で再生中の曲も表示されます。その他にAUX端子(これもコンソールボックス内にある)も一応備えています。

不評のDVDナビは、メニュー画面&地図画面のグラフィックや機能も確かに新鮮味には乏しい印象。ミトで使っていた7年前のカロッツェリアHDD楽ナビと比較しても機能は同等といったところです。まあ僕の場合は、店などの情報量、精度の高いルート案内、高度な学習機能、アミューズメント機能などを求めているわけでもなく、普通に無難な道を選んで案内してくれればいいという感覚なので特に不満はありません。ルート検索スピードはHDD楽ナビよりもむしろ早いくらいで、道案内をするという基本性能に大きな問題はないと思います。とはいえ、競合他車が高機能ナビを装備しているのだとしたら、確かにXEの商品力を落とす要因には成り得るでしょう。ちなみにこのDVDナビ、運転席と助手席で別画面に見える2画面ディスプレイ機能を実装していて、助手席の人だけテレビを見るためのワイヤレス・ヘッドフォンまで付属しているという一面も一応あったりします。本国仕様にあるInControl(スマホと連携、Head-Up Display機能付)が来年モデル以降に採用される可能性があるので気になる人は待ってみるのも良いかもしれません。このナビでひとつだけ不満を挙げるとしたら、走行中にルート検索操作を禁止していること。安全のためというのは理解できるんですが、助手席の人が操作することもあるわけですからこの仕様は残念です。

やっぱりダメかあ、と思ったのが雨滴感知式のワイパー。かなり長いインターバルから短いインターバルまで状況によってマメに切り替わるハイテク装備で、しかしそれがアダになっているのか傘を差さなくてもなんとかなるような小雨でも突然短いインターバルで動くことがあったりして、なかなか人間が思うような拭き取り方をしてくれない。そもそも、人によってどの状態が適切と感じるかが違うものについての自動機能は感性が合わないと困ったことになる性質のものであり、インターバルの設定が自動しかない(感度が4段階あるだけ)のは歯がゆいところです。あと、普段使いではとても便利なスマートキーとタッチ式のロックは、洗車時にいちいち反応してロックとアンロック(その都度室内灯が点灯してドアミラーが開閉する)を何度も繰り返すことがあって煩わしい。スマートキーを離れたところ(3メートルくらい離れていれば反応しない)に置いておくくらいしか対策はないようです。

さて、ようやくクルマに乗り込んでのインプレに移ります。シートに座ると着座位置は低く、インパネのデザインと合わせてドライバーの囲まれ感は外からのイメージよりも強い。やや潜り込むようなスポーツカー的なタイトさを狙っているので、開放的な空間を求めている人には狭いと感じられるかもしれません。ジャガー・ブランドのクルマとしてこのスポーツカー的な前席の空間設計は外せないところだったんでしょう。着座位置が高めだった前車ミトとまったく違いますが、ユーノス・ロードスターのタイトな運転席に11年も座っていた身なので、このタイトさが心地良く感じるようになるまで時間はかかりませんでした。

これまでの車歴から較べたら当たり前のことながら、走り出すとその乗り味はやはり高級車だなあと実感します。まず、ステアリングホイールのレザーが滑らかでとても上質。パワステは軽めの設定でしっとりした感覚を備えながらも手応えがあり、路面の状況もしっかりと伝えてくれることも含めて、車格に恥じない良いモノ感がある。ミトのステアリングは適度な重みと剛性感があるだけでなく、とても気に入っていたのですが、やはりFRならではの自然なステアリングフィールというのは確実にあるんだなあと再認識。滑らかでソフトな乗り心地と静寂性の高さは、質やフィーリングこそ違うでしょうが、ライバルと比べても負けているということは恐らくないでしょう。特にハーシュネスや荒れた路面のいなし方とタイヤの接地感はかなりのハイレベル。新開発車体の恩恵かボディ剛性はさすがに高く、それでいて硬い箱に揺すられるような感覚とは無縁の上質な乗り味は白眉といって良いチャームポイント。19インチ・ホイールで荒れた路面を走ってもバネ下の重さをあまり意識させないところなどと合わせて、ボディとサスペンションにお金をかけたことによる効果が出ているであろうと実感できるところです。ダイナミックモードにしたときには少しハーシュネス系のショックが強くなりますが、乗り心地が大幅に悪くなるというほどではありません。念の為に繰り返すと、この乗り味の評価はスポーツ・サスとアダプティブ・ダイナミクスのセットオプション装着車のもので、非装着車だとどのくらい違うのかはわかりませんが全体の傾向が大きく違うわけではないだろうと想像します(最後に非装着車との比較を追記しました)。

プレステージの2.0Lターボエンジンは1600キロの車体に対して余裕あるスペックとは言えません。それでも、街中を流す程度ならストレスを感じるシーンはないでしょう(当たり前か)。ただし、瞬時に加速に移りたいとき、上り坂、高速道路での加速といったパワーが欲しいシーンでは、中低速のトルクがちょっと薄くてそれをこまめに変速するATで補っている感じはあります。ミトもダウンサイジング・ターボだったわけですが、よほどエンジン回転数が下がっていないかぎり、アクセルを踏めばシフトダウンしなくてもクルマを前に押し出す力があり、ダイナミック・モードにすればモリモリと中低速トルクが湧き出る地力がありました。XEでもダイナミックモードにすればトルク感が少し増すものの、ミトのダイナミックとノーマルほどの落差がなく、トルクの出方も穏やかなので中低速の厚み(アクセルの踏み込み量にリンクしてクルマが前にぐっと出るような感覚)を感じるまでには至りません。0-100km/h加速はミトより速いスペックのはずなのに今のところむしろ遅く感じる(速度を出してもスピードを感じないせいでもある)くらいで、スムーズに高回転まで回るにもかかわらず、ビュイーンとモーターのように無機質なフィールのせいもあって伸びが鋭い感じもあまりしない。このようにアクセルの踏み込み初期の反応が良くないと感じるのは、Dモードが高いギアを積極的に選びたがるプログラミングであることに加えて、マニュアル・トランスミッションに身体が慣れてしまっている僕がトルコンATの特性(特にスリップ)にだるさを感じているという要因も大きそう。ちなみに、回したときのエンジンとエキゾーストのサウンドはかなり控えめで音にエンターテイメント性がないのはちょっと残念。156ツインスパークの快音やミトのように心地よい低音エキゾーストノートまでは望まないにしてもスポーティと感じさせるサウンドは欲しかったところ。まあ、ターゲットの顧客層を考えるとこれで妥当なのでしょう。

走りで一番心配だったのがクルマの挙動。何しろ大きて重いことは数字上明らかで、前車ミトより400キロも重い。参考までにこれまでの車歴で最重量はアルファロメオ156で1300キロ、それとの比較でも300キロ重い。ユーノス・ロードスターから156に乗り換えたとき、ハンドリングがキビキビしていると言われていた156でもクルマの挙動がモッサリしていることはすぐに実感したものでした。156はダンパーをビルシュタインに替えてから脚が引き締まったとはいえ、モッサリ感を意識させることには変わりなく、大きいクルマだから仕方ないと納得して乗っていたわけです。XEにももちろん、これまでのクルマのようなキビキビ感を求めはしないものの挙動がモッサリしていたら嫌だなあという不安はありました。いざ乗ってみると、当然ミトやロードスターのようなステアリング切り始めの応答性や、鼻先がグイグイとコーナーのインに入っていく感覚、ヒラリヒラリという身のこなしはなく、車体の大きさと重さは確実に意識させられます。しかし156のようにいかにも重いなあというモッサリ感や強いアンダーステアを示すことなく、あくまでもジェントルな振る舞いでありながらRが深いコーナーでも鼻先が思った通りにインに向かって行くところが大違い。その挙動は一定の落ち着きを伴いながらも爽やかと評しても良いくらいで、今まで経験したことのないこのコーナリング・マナーを新鮮な気持ちで楽しめています。

尚、脚の動きの特徴としては、ステアリングをグイッと勢い良く切ったときの初期のロールスピードが少し速い(といってもグラリという腰砕け感ではない)ところは恐らくドイツ車と違うんじゃないでしょうか。この特性が滑らかな乗り心地を実現している理由でもあるような気がします。こう書くと柔らかくて頼りないのでは?と思われそうなものの、初期ロールの段階を過ぎるとむしろ姿勢変化が小さくなり安定した姿勢でコーナーを抜けていく感覚で、その限界はかなり高そう。ダイナミック・モードでも基本特性はこの特性とあまり変わらいものの、初期ロールはじめ全体的にロールがやや抑えられる印象。まあ、まだ箱根と伊豆を軽く流しただけなので追い込んだときの挙動はまた改めて確認しようと思います。

尚、高速道路のクルージングはかなり快適です。イマドキのクルマは小型車でも高速クルージングは安定していて疲れるようなことはありませんが、さすがにこのクラス、しかも最新設計のボディを纏うクルマともなると直進安定性が格段に優れていて、騒音も少ないので至極快適そのもの。いざ追い越し加速というときのエンジンの力感はやはりもうひとつで、その代わりに素早くシフトダウンして加速してくれるので必要にして十分というところ。長距離ツーリングの疲労度はこれまでの所有車と比較にならないほど軽減されるものと今後の期待が高まります。装備が過剰で持て余している中、唯一これは、と思ったのがアダプティブ・クルーズ・コントロール。右足を遊ばせた状態でクルマに速度調整を委ねるという不安を抱きながら恐る恐る使ってみると、思った以上に的確に前のクルマに付いて加速、減速してくれて、首都高でも流れているいるところなら使えてしまう。設定もわかりやすいし、長距離クルージングの疲労軽減に役立ちそうです。ただし、前の状況に応じて加減速することは必ずしも燃費走行になるわけではないのと、やはり常にブレーキを踏む準備はしていなくてはならないため気を抜くためのものではないことから、基本的には右足を固定していることに疲れたときの補助として使うものだとは思います。

現時点で気になるのはサーボが強めなブレーキでしょうか。アルファロメオ156は右ハンドルと左ハンドルのブレーキフィールがまるで違っていて、右ハンドル化の弊害(スポンジーでフィールも効きも安定しない)がありました。流石に右ハンドルの国の車なのでそこまで程度はひどくありませんが、踏力に対する制動の出方がやや不安定で、ゆっくり停車するときに、停車直前の踏力の緩め方に気を遣わないとカックンとなりやすい(停止前にATのシフトダウンの挙動で少しギクシャクするせいもある)のはちょっと不満。一方、強く制動を立ち上げるときの効きと剛性感は、本格的スポーツカーと遜色ないくらいのミトのブレーキと比べるのは酷ながら、不足感はなくまずまずしっかりしていると報告できます。

ダイレクト感に不満を漏らした8速ATのデキはどうか。なにしろ所有車として初のATです。若いころは仕事で会社のクルマを毎日運転していたのでトルコンATじたいの経験値は10年以上あるものの、当時はまだ高級車でも4速までしかありませんでした。ギアの数が倍になるといったいどんな挙動を示すのかと思えば、街中をユルユルと流すときにはきめ細かくギアを選び、アクセルを多めに踏めばすぐに1段シフトダウン、急加速したいときに深く踏み込めば一気に複数段落としをするなど、状況に応じて適切に動作してくれるスグレモノ。シフトショックは小さめで、低速で強くアクセルを踏むようなシーンでもなければ終始スムーズ。ZF製8HPは評価の高いトランスミッションですがそれも納得できる完成度の高さです。エンジンブレーキを使いたくなったら左側のパドルを操作すれば1段シフトダウンできるのも楽でいい。Sモードはギアを(場合によってはかなり)引っ張り気味にするセッティングでアップテンポに走りたいとき用、あるいは燃費志向のDモードではかったるくてやってられない人用。パドルはDでもSでも操作可能(Sのみ操作可能の設定にもできる)ではあるものの、Dのときはしばらくパドル操作をしないと通常の自動変速に、一方でSだとパドルで指定したギアに固定されたマニュアルモードになるという設定になっている。パドルでの変速はシフトアップは素早いものの、シフトダウンはやや反応が遅くてエンジンブレーキの効きが弱いのは、トルコンであることを考えれば仕方がないのかも。パドルレバーはステアリングコラムの回転に連動するタイプでポジションも適切でタッチも含めて操作性は良好です。ちなみに、ドライブセレクターがP以外の位置でエンジンを停止させると自動的にPに移ってダイヤルが収納されます。アクセルを踏むと自動で解除されるパーキングブレーキも含め、ズボラ人間を養成するかのような親切設計です。いや、便利なんですけどね、クルマの基本操作をここまで自動化しなくてもという違和感がどうしても拭い去れません(苦笑)。

燃費は、まだサンプルが少ないのであくまでも参考値で言うと、郊外走行で12km/l、高速道路だと14km/lといったところ。ストップ&ゴーの市街地だけという走り方をあまりしていないのでこちらはわからないもののよほど流れが悪くないかぎり、アクセルを穏やかに踏んでいれば10km/lを切らない可能性もありそうな感じです(ATが巧く機能している印象)。現代のクルマとしては褒められた数字ではありませんが、カタログ表記のJC08モード11.8Km/lとの差がほとんどないどころか、市街地走行ばかりでもしない限りむしろカタログスペックよりも良い数字が出るときもありそう。このクルマのエンジン特性とギア比が、JC08モードの測定方法で良い数字を出すものになっていないということなんでしょうが、恐らくほとんどのクルマがJC08モードより実際の燃費がだいぶ悪くなる中、カタログ数値と実燃費があまり変わらないということは言えそうです。燃費についてはもう少し実績を見てからまた報告しようかと思います。

全体的にクルマの仕上がりという観点で見た場合、アルファロメオはその個性の代償として細部で「なんじゃコレ」と思えるところがあったものです。例えば、目が届かないところの内張りが雑だったり、室内張りカーペットの毛が長めで毛質が固くカールしているので小石などが入ると掃除機で吸い取れなかったり、ドアハンドルがグニャっとヤワだったり、シートベルト引き出しロックが過敏過ぎたり、ヘッドライトの自動光軸調整が動きすぎたり動かなかったり、どういうわけかドアが異常に重かったりするなどなど。クルマの本質に関係ないところなので個人的には「ま、いっか。こういうところを気にしない代わりに楽しさを追求することにエネルギーを使っているんだから」という感じでしたが、さすがにイタリアよりはしっかりしていそうな英国製でXEくらいの車格ということもあってか、そういう細かい部分でも「なんじゃコレ」的なものはなく、国産車のクオリティに慣れている人でも落胆することはないように思います(あくまでも個人的な感覚です)。Dセグメントでプレミアムを売りにするのならそれくらいは当然なんでしょうけれど。

最後に、話が購入前のことに戻りますが、ボディカラー、内装、ホイールといった目立つところから小物まで選択肢があってその種類が豊富であるのはとても素晴らしいことで、(センスを問われる部分もあるとはいえ)自分好みの自分だけの1台になるという満足度は非常に高いです。納車待ちが長くなるとしても自分でカスタマイズすることをお勧めします。Webサイトのコンフィギュレーター(オプション選択した結果をビジュアル化するシミュレーター)の完成度が高く、カタログやWebサイトの写真に載っていない自分仕様の実車との対面はなかなか感動的ですらあります。ちなみに、ここまでの感想からR-Sport(シートがバケットタイプらしい)を選んだ方が良かったのでは?と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、メッキ系の外装はじめ見た目にエレガントさが欲しかったのと装備の違いでプレステージを選択したのでした。

以上、浮かれすぎて長くなりましたが、ネットに溢れる短時間の試乗記には出てこない情報を盛り込むことを意識してファースト・インプレッションを書いてみました。やはり、というか当たり前のことながらミトなどの小型車とは乗り味から挙動から何から何までかけ離れた別種のクルマです。また、イタリア車のような心踊る楽しさはまったくありません。「そんな人が買うんじゃないよ」というのはごもっともなんですが、カッコいいと思える外見ならばこういう快適なサルーンも一度は所有してみてもいいかなという気持ちはココロの片隅にあって、自分の感性に合った見てウットリするルックスのクルマが現れてしまった。眺めているだけで幸せな気分になれるクルマはそうは登場するわけではなく、しかし手に入れる機会が訪れたのであれば、それを所有できることは僕にとって至上の喜びなのです。ラテン系の小型車への思いは断ち切れませんが、今後しばらくはプレミアムDセグメント・サルーンならではの良さを味わって行きたいと思います。

【追記:ディーゼルR-Stortの試乗】
短時間ながらディーゼル・エンジンのR-Sportに試乗しました。

まず、ディーゼル・エンジンですが明らかにガソリンよりも低速トルクが厚くて乗りやすい。信号待ちからの加速では感覚的には2割増しくらい力強く、このくらいトルクがあれば不満を感じる人は少ないでしょう。上まで回したりしたときの伸び感は期待できなさそう(試していない)であるものの、街中や首都高を走る程度の速度域のときはこちらのほうが右足の踏み方にリンクした加速が得られます。

一方で、音と振動はやはりディーゼルのネガを払拭できていません。ネットでは「ガソリンと遜色ない」などと書いている評論家/ライターが少なくありませんが、明らかに違います。エンジンの吹け上がりのスムーズさや滑らかなフィール、静寂性を期待する人には向いていないと思います。

ディーゼル車は価格が20万円高いもののその差はエコカー減税でほぼ相殺されるので、あとは尿素デバイス(?)の維持費、燃費、初物のリスクなど総合的に考えると迷うところですが、このようにディーゼルとガソリンはまったく特徴が異なり、それぞれに良い点と悪い点があるので、何をを重視するかをよく考えて決めた方が良いと思います。

試乗車はR-Sportで19インチホイールを装着していたので、偶然にも僕のクルマと同じホイール(タイヤ)・サイズで、スポーツ・スプリングを組み込んだ脚回り、そしてアダプティブ・ダイナミクス非装着車。即ちアダプティブ・ダイナミクスだけの違いを直接比較することもできました。予想していたよりも引き締まった固めの脚で「しなやか」という言葉はR-Spotrからは連想できませんでした。個人的にはこういう引き締まった脚は好みなのですが、このクラスであればしなやかな乗り心地が欲しいと思われている方はアダプティブ・ダイナミクスの装着を強く推奨します。アダプティブ・ダイナミクスの素晴らしいところは、街乗りではしなやかさがありながら山道では引き締まったフットワークを見せること。ジャガーはオプション品の価格が車格相応に高めですが、このアダプティブ・ダイナミクスはバーゲン・プライスだと思います。

その他、R-Sportはシートもスポーツタイプ。こちらはノーマルとくらべて座り心地がそれほど違わないんですが、サイドサポートの幅が狭めに設定されていて滑りにくい。スポーツ走行には明らかにこちらの方が快適。それでもタイトということはまったくなく、むしろ普通のシートだと思います。快適性も含め、個人的にはこちらのシートの方が断然良かったです。

該当の記事は見つかりませんでした。