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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

勝手にオーケストラランキング 2019

2年前に書いた自分勝手なオーケストラ・ランキング、その後観たコンサートを加え、見直しを含めてアップデートしました。

オーケストラの演奏というのは、指揮者がオケの力をうまく引き出していたか、曲がオケの特徴にマッチしていたか、その日の調子はどうだったのか、観た席はどこだったのかといった要素が結構大きいので、お遊びランキングとして軽い気持ちで見ていただければと思います。尚、あくまでもオケの技量に着目したもので、そのときの感動の度合いと必ずしも一致しているわけではありません。上位ランクでも好みと違う演奏もありました。また、最近は耳がかなり肥えてきたことが自分でもわかるので、2014年以前に観たオケは評価が甘めの傾向があるかもしれません。


【Sランク】
クリーヴランド管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第2番」「第6番)
(指揮:フランツ・ウェルザー=メスト、2018年)

バイエルン放送交響楽団(注)
⇒ マーラー「交響曲第9番」
(指揮:マリス・ヤンソンス、2016年)

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ハイドン「交響曲第80番」、ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」
(指揮:サイモン・ラトル、2015年)

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
⇒ ストラヴィンスキー「火の鳥」、チャイコフスキー「交響曲第5番」
(指揮:マリス・ヤンソンス、2013年)
⇒ ブラームス「交響曲第1番」、マーラー「交響曲第4番」
(指揮:ダニエレ・ガッティ、2017年)


【Aランク】
シュターツカペレ・ドレスデン
⇒ シューマン「交響曲第2番」同「第3番」
(指揮:クリスティアン・ティーレマン、2018年)

ルツェルン祝祭管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第2番」、ストラヴィンスキー「春の祭典」
(指揮:リッカルド・シャイー。2017年)

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第9番」
(指揮:ズービン・メータ、2016年)
⇒ マーラー「交響曲第3番」
(指揮:マリス・ヤンソンス、2015年)

シュターツカペレ・ベルリン
⇒ ブルックナー「交響曲第5番」「交響曲第6番」
(指揮:ダニエル・バレンボイム、2016年)

シカゴ交響楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第5番」、マーラー「交響曲第1番」
(指揮:リッカルド・ムーティ、2016年)

ロサンゼルス・フィルハーモニック
⇒ マーラー「交響曲第6番」
(指揮:グスターボ・ドゥダメル、2015年)
⇒ マーラー「交響曲第9番」
(指揮:グスターボ・ドゥダメル、2019年)

マーラー室内管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第2、第3番、第4番」
(レイフ・オヴェ・アンスネス弾き振り、2015年)

サイトウ・キネン・オーケストラ
⇒ ベルリオーズ「幻想交響曲」
(指揮:小澤征爾、2014年)

ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
⇒ ブルックナー「交響曲第4番」、プロコフィエフ「ロメオとジュリエット」抜粋)
(指揮:ワレリー・ゲルギエフ、2015年)
⇒ ブルックナー「交響曲第3番」
(指揮:ロリン・マゼール、2013年)


【Bランク】
ロンドン交響楽団
⇒ バーンスタイン「交響曲第2番」、ヤナーチェック「シンフォニエッタ」、マーラー「交響曲第9番」
(指揮:サイモン・ラトル、2018年)

ボストン交響楽団
⇒ モーツァルト「フルートとハープのための協奏曲」、ラフマニノフ「交響曲第2番」
(指揮:アンドリス・ネルソンス、2017年)

マリインスキー歌劇場管弦楽団
⇒ ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第3番」「第4番」、「シンフォニック・ダンス」
(指揮:ワレリー・ゲルギエフ、2017年)

バンベルク交響楽団
⇒ モーツァルト「交響曲第34番」、ブルックナー「交響曲第7番」
(指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、2016年)

ベルリン放送交響楽団
⇒ ブルックナー「交響曲第8番」
(指揮:マレク・ヤノフスキ、2015年)

ベルリン・ドイツ交響楽団(注)
⇒ R.シュトラウス「英雄の生涯」
(指揮:トゥガン・ソヒエフ、2015年)

ウィーン交響楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第4番」、ニールセン「交響曲第5番」
(指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、2015年)


【Cランク】
エストニア・フェスティバル管弦楽団
⇒ シベリウス「ヴァイオリン協奏曲」「交響曲第2番」
(指揮:パーヴォ・ヤルヴィ、2019年)

フィルハーモニア管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第7番」「ピアノ協奏曲第3番」
(指揮:エサ=ペッカ・サロネン、2017年)

トーンキュンストラー管弦楽団
⇒ ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲」、R.シュトラウス「英雄の生涯」
(指揮:佐渡裕、2016年)

パリ管弦楽団
⇒ メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、マーラー「交響曲第5番」
(指揮:ダニエル・ハーディング、2016年)

国立リヨン管弦楽団
⇒ ラヴェル「ピアノ協奏曲」、サン=サーンス「交響曲第3番」
(指揮:レナード・スラットキン、2014年)

バーミンガム市交響楽団
⇒ ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」「交響曲第4番」
(指揮:アンドリス・ネルソンス、2013年)

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団
⇒ ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」「交響曲第1番」
(指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク、2019年)
⇒ ベートーヴェン「交響曲第7番」、ブラームス「交響曲第1番」
(指揮:ミヒャエル・ザンデルリンク、2013年)


【Dランク】
スイス・ロマンド管弦楽団
⇒ メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、マーラー「交響曲第6番」
(指揮:ジョナサン・ノット、2019年)

フィラデルフィア管弦楽団
⇒ プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」、ブラームス「交響曲第2番」
(指揮:ヤニック・ネゼ=セガン、2016年)

国立トゥールーズ・キャピタル管弦楽団
⇒ サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」、ムソルグスキー「展覧会の絵」)
(指揮:トゥガン・ソヒエフ、2015年)

ベルリン・ドイツ交響楽団(注)
⇒ ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第3番」、ブラームス「交響曲第1番」
(指揮:トゥガン・ソヒエフ、2015年)

バイエルン放送交響楽団(注)
⇒ ブラームス「ピアノ協奏曲第1番」、R.シュトラウス「薔薇の騎士」
(指揮:マリス・ヤンソンス、2014年)

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
⇒ メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」
(指揮:リッカルド・シャイー、2014年)

ドイツ・カンマーフィル・ブレーメン
⇒ ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」「交響曲第2番」)
(指揮:パーヴォ・ヤルヴィ、2014年)

【Eランク】
ウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団
⇒ ブルッフ「スコットランド幻想曲」
(指揮:リオ・クオクマ、2019年)

ロイヤル・ノーザン・シンフォニア
⇒ ストラヴィンスキー:弦楽のための協奏曲、モーツァルト:交響曲第38番「プラハ」
(指揮:ラルス・フォークト、2018年)

フランス国立ロワール管弦楽団
⇒ ラヴェル「ダフニスとクロエ第2組曲」「左手のための協奏曲」)
(指揮:パスカル・ロフェ、2013年)
⇒ デュカス「魔法使いの弟子」、サン=サーンス「死の舞踏」、ラヴェル「ボレロ」
(指揮:パスカル・ロフェ、2017年)

ラムルー管弦楽団
⇒ サン=サーンス「序奏とロンド・カプリチョーソ」「ハバネラ」、デュカス「魔法使いの弟子」、シャブリエの狂想曲「スペイン」。
(指揮:フェイサル・カルイ、2013年)


【Fランク】
ロシア国立管弦楽団 [ロシア国立シンフォニー・カペラ]
⇒ チャイコフスキー「交響曲第4、第5番、第6番」
(指揮:ヴァレリー・ポリャンスキー、2015年)

新日本フィルハーモニー交響楽団
⇒ マーラー「交響曲第2番」
(指揮:ダニエル・ハーディング、2015年)
⇒ チャイコフスキー「ピアノ協奏曲第1番」、ストラヴィンスキー「火の鳥」
(指揮:カチュン・ウォン、2016年)

デュッセルドルフ交響楽団
⇒ シューマン「ピアノ協奏曲」、シューベルト「ロザムンデ序曲」
(指揮:アジス・ショハキモフ、2015年)

東京都交響楽団
⇒ ベートーヴェン「交響曲第3番」
(指揮:小泉和裕、2014年)

NHK交響楽団
⇒ ブラームス「交響曲第2番」「交響曲第3番」
(指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット、2013年)

読売交響楽団
⇒ サン=サーンス「交響曲第3番」
(指揮:川瀬賢太郎、2013年)


(注)は2度観てまったく印象が違ったオケ。バイエルン放送交響楽団がSランクとDランクに、ベルリン・ドイツ交響楽団がBランクとDランクの2つに分かれているのは、共に指揮者が同じだったのに同じオケとは思えないほど何もかもが違っていたから。一方でその他複数回観たオケは指揮者が違っていてもオケの地力、音色に大きな差異を感じませんでした。

事前の期待度ほどでないと印象が悪くなるもので、数々の名演をCDで聴くことができるバイエルン放送交響楽団(1度目)はオケの揃い方も音色も歌い方もイマイチと感じ、世評よりもかなり低いランクに(2度目で評価が一変しましたが)。一方でアフォーダブルなチケット代ながら音色がリッチで雄弁だったオケもありました。日本のオケは全体的に個人技が見劣りするし、オケとしてもベタッとのっぺりしたサウンドで全体に締まりがなく、サイトウ・キネンを除いてどれも残念だった印象。たまたま行った日が悪かったんでしょうか。

Sランクはオケの性能が別格。コンセルトヘボウの暖色系で滑らかな美音と雄弁な歌い方、全パートに亘る高度な演奏技術は、ベタなチャイコフスキーの交響曲ですら涙を誘ったほど。ベルリン・フィルも格別なレベルで、小編成のハイドンでこんな音が出るのかとその上手さに敬服。バイエルン放送交響楽団(2度目)も個人技、オケのサウンドの主張共に極上レベルでマーラーの9番は当分生で聴かなくてもいいやと思わせたほどの圧巻の演奏でした。

あえて細かく格付けしましたが、Cランク以上は、満足して会場を後にすることができたオケです。Bランクはコンサート後「とても良い演奏だったねー」と思えたオケで、Aランク以上は一切集中力が切れずに演奏に没頭して「ホント、素晴らしいモノ聴かせてもらいました」と思えたオケ。いずれにしても数年前の英グラモフォン誌のランキングや日本の雑誌のランキングとはだいぶ違います。

ちなみに、クラシックにまだ関心がなかった(演奏の良し悪しなどまったくわからなかった)ときに現地で観たロンドン交響楽団(ムソルグスキー「展覧会の絵」)とローマ歌劇場管弦楽団(ヴェルディ「アッティラ」)は、生演奏って素晴らしいな、で終わってしまったので評価できません(今思うともったいないことをした・・・)。


前回からのアップデート分のオケ短評。

フィルハーモニア管弦楽団:
別日のマーラー6番はネットでは評判良かったけれど、この日はもうひとつ。古楽アプローチのベートーヴェンが僕の肌に合わなかったのと、席のせいかトランペットだけやたらと響いていたのでそもそも演奏に集中できなかったという要因が大きかったかも。

ルツェルン祝祭管弦楽団:
演奏者の実力はさすが。でもこれまで映像で観てきたアバドの演奏と比べると、統制感と繊細さがやや不足していた印象。

ボストン交響楽団:
美しい弦と安定した金管。演奏力は高いとは思ったものの、突き抜けた感じがしないのは木管の響きと艶がもうひとつ足りていなかったから。

マリインスキー歌劇場管弦楽団:
美しい弦と安定した管。知名度、チケット代はだいぶ違うけれど直前に聴いたボストン交響楽団とサウンドの感触もオケの精度も同等という印象(ラフマニノフは得意曲だったからかも?)。

クリーヴランド管弦楽団:
弦の朗々たる歌いっぷり、金管木管も非常に高いレベルで安定、かつ饒舌で、個人的な感触ではシカゴをも凌ぐ実力。

ロンドン交響楽団:
温もりのある弦の雄弁な歌い方が印象的で管も安定。欲を言えば、金管木管にもう一息の主張があれば、という感じ。

シュターツカペレ・ドレスデン:
渋みのあるドイツオケらしい弦の音色が特徴的で、管のレベルも高く、オケ全体から発する音楽的な「圧」を感じた。

スイス・ロマンド管弦楽団:
各パートの歌いっぷりが見事で、合奏の迫力もかなりのもの。ただし、一部管楽器の音は汚く、全体に音のバランスが悪く、元気はいいけれど粗っぽく、デリカシーが欠けている(指揮者の責任も少なからずある)。

エストニア祝祭管弦楽団
非常設オケながら、指揮者にしっかりと統率され、一流オケのようにとまでは言わないけれど、個人の力量やオケとしてのアンサンブルはなかなかのもの。

ウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団
学生らしき若手多数のオケだけに聴いて感心させられることこそないけれど、予想外にオケとしてのまとまりが良く、著しく技量が低いということもなかった。将来性を感じさせる楽団員の姿を見ていると、これはこれで良いと思えてくる。

ザンデルリンク指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団 2019年日本公演

ユリア・フィッシャー201907


2019年7月3日
サントリーホール
【演目】
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲(ユリア・フィッシャー)
(アンコール)パガニーニ:24の奇想曲第2番
ブラームス:交響曲第1番
(アンコール)ブラームス:ハンガリー舞曲第5番

ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団は、まだクラシックを聴き始めの頃に観に行ったことがある。演目はベートーヴェンの交響曲第7番とブラームス交響曲第1番という黄金の名曲プログラム。オケの良し悪しがまだそれほどわかっていなかったときだったとはいえ、馴染みのある曲だったこともあって良い印象が記憶に残っている。

その後もこの指揮者とオケのコンビはよく日本に来ているけれど、どの日もベートーヴェンやブラームスの有名曲が中心の演目。オーケストラとして音楽性をアピールすることよりも人気曲で集客しようという意図しか感じられないプログラムで、そればかりでいいの?と疑問を感じて観に行こうという気にはなれなかった。ミヒャエル・ザンデルリンクは親の七光りで、音楽家としての意欲が足りないんじゃないかとも思った。ちなみに、今回の日本ツアー別日では、

シューベルト 交響曲第7番「未完成」
ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
ドヴォルザーク 交響曲第9番「新世界より」

という、ある意味滅多にお目にかかれない絵に描いたような人気曲プログラムが組まれていたりする。

ミヒャエル・ザンデルリンクは今シーズン限りで主席指揮者の座を退く(後任はヤノフスキ)ことになっているけれど、これまでに目立った活躍は聞いたことがなく、集客プログラムを何年も続けるような指揮者が評価されるようなことはないのでは?と思っていたら、最近はコンセルトヘボウ管弦楽団とベルリン・フィルでも客演しているというから、なんとも不思議な感じがする。

それはともかく、この日も正直なところ興味をソソられない、普通なら足を運ぶことはないプログラム。しかし、ソリストがユリア・フィッシャーとなると観に行かないわけにはいかない。ソリストがお目当てでオケのコンサートに行くのはこれが初めてのこと。

以前の記事(http://buhaina.blog.fc2.com/blog-entry-412.html)に書いた通り、ユリア・フィッシャーのヴァイオリンに僕は魅せられてしまっている。彼女のヴァイオリンは、端正でありながら単なる折り目正しさに収まることなく、情感が豊か、抑えるところは抑えつつ、ここぞいうところでの荒々しさも当然備え、その表現の幅の広さと曲の場面にあった表情作りの巧さがあり、それを曲全体の表現に昇華させている。

有名曲ともなると、これまでに数多くの名手による録音が残されており、過去の演奏家とは違う表現を主張するために、創意工夫、趣向を凝らした、場合によってはわざとらしいフレージングをする奏者も少なくなく、それを好ましいとする人には彼女のヴァイオリンは少し物足りないと感じるかもしれない。でも僕は、正直さに溢れていながら端正な技巧と表情が豊かな彼女のヴァイオリンに惹かれる。

そのフィッシャーによるブラームスのヴァイオリン協奏曲、まさにここで書いてきた通りの演奏だった。普通、期待した通りの結果が返ってきただけの場合、人間はそれほど満足したりはしないんだけれど、そんな不足感は皆無で演奏に没頭してしまっていた。要は好きな演奏家の演奏を、生で聴いたらやはり素晴らしかったという当然と言えば当然の話。実演を聴いて付け加えるとしたら、完璧にコントロールされた微音の美しさと繊細な響きが出色で、第2楽章は素晴らしい聴きどころだった。このまま演奏が終わらなければいいのに、と思う演奏を聴けたことは本当に幸せなことである。

後半の交響曲第1番は、この日に限ってはボーナス扱いで気軽に臨んだ。6年前に聴いて好印象だったこのオケ、しかしその後多くの素晴らしいコンサートに触れて耳が肥えてしまった今聴いたら物足りないと感じるんじゃないかという懸念があったから、期待値を下げていた。ところが、オーソドックスなテンポによる進行と、誇張のない自然で柔らかい表現が心地よく、シュターツカペレ・ドレスデンにも通じるドイツオケらしい少し渋めの(洗練を志向していないとも言える)サウンドが曲に良く合っている。厳しい目で見ると、金管と(オーボエ以外の)木管に力強さに物足りなさがあった(上手くないのに汚い音で大きな音を出されるよりはずっと好ましい)し、テンポを急に上げたときに弦のセクションが乱れたりする場面もあったけれど、手練の曲ということもあってブラームスの良さを上手く表現していたように思う。経験上、S席が2万円以下のオケで安心して音楽に身を委ねられる演奏を聴けることは少ないだけに嬉しい誤算だった。

というわけで望外に良い演奏を聴けたこの日のコンサート。もちろん、ユリア・フィッシャーを存分に味わえたことが最大の喜び。次はバッハの無伴奏や、リサイタルでフィッシャーを聴いてみたい。

ラ・フォル・ジュルネ 2019

LFJ201905

もうそろそろ行かなくていいかなと思いつつ、気がつけば8年連続参加になっているラ・フォル・ジュルネ。引っ越して国際フォーラムまでは30分の距離になり、より気軽に行けるようになったことでまた今年も、となりました。

5/3(金)
【1】
指揮:リオ・クオクマン
演奏:ウラル・フィルハーモニー・ユース管弦楽団
演目:
・フロレンツ:交響詩「クザル・ギラーヌ(赤照の砂漠)」op.18
・ブルッフ:スコットランド幻想曲op.46 (vl:梁美沙[ヤン・ミサ])

【2】
演奏:アナスタシア・コベキナ(vc)、パロマ・クーイデル(p)
演目:
・ブーランジェ:チェロとピアノのための3つの作品
・ヒナステラ:パンペアーナ 第2番
・フォーレ:ゆりかご op.23-1
・ブラームス:チェロ・ソナタ第2番 ヘ長調 op.99

【1】
ユースオケということで、ハードルを上げず、より気軽な気持ちで聴いてみる。日本初演のフロレンツの曲は長い(20分以上)わりには、これと言った展開もメリハリもない曲で睡魔に襲われてしまう。ブルッフは、元気いっぱいの若いソリストの熱演とオケの好サポートもあって、なかなかの好演。あまりオケへの技術的要求度が高い曲ではなさそうではあったんですが、僕の目からみたら子供みたいに見える、女性比率8割以上の若いメンバーで聴く演奏は予想以上に良い演奏で、あまり生で聴く機会のないこの曲を楽しめるプログラムでした。

【2】
94年生まれという若きチェリストをメインに、それほど馴染み深くない小曲とブラームスのソナタというプログラム。現代的なブーランジェ、モダンなラテン・テイストのヒナステラ、ロマンチックなフォーレと選曲が良かった。コベキナのチェロは若さ溢れる激しさ(ちと鼻息が大きすぎるけど・・・)と瑞々しさがあるし、ルックスも良くてこれからスターになる可能性十分という感じです。こういう若く有望な演奏家を紹介するのもLFJの大事な役割。サポートのクーイデルのピアノも素晴らしい・・・と思えるようになったのは自分でもピアノを弾くようになったからで、足元まで見えていたのでペダルの観察などしながら聴き入りました。やはりプロのピアニストって凄いなあ・・・。これまでLFJで聴いた中で屈指の演奏でした。

もう来年はいいかも、と思いつつ来てしまうのは、普段あまり聴いていない曲に触れてその素晴らしさを肌で感じることができるから。今年はなかなか良いプログラムに当たり、かなり楽しめて満足度が高かったです。

終演後も恒例となっているVIRONでディナー。キノコに形を模したプティアグール(羊のチーズ)のクセがたまらないアスパラ、草のみを食べさせて育てたというアイルランド産リブロースは和牛とも熟成肉ともまったく違う脂控えめで野性味に溢れた味わい。いつも通り、美味しくいただきました。

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パーヴォ・ヤルヴィ指揮 エストニア・フェスティバル管弦楽団 2019年日本公演

パーヴォ・ヤルヴィ-エストニア201904

2019年4月30日
サントリーホール
【演目】
ペルト:ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 (五嶋みどり)
(アンコール)バッハ 無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番第3楽章ラルゴ
トゥール:テンペストの呪文
シベリウス:交響曲第2番
(アンコール)
レポ・スメラ:スプリング・フライ
ヒューゴ・アルヴェーン:羊飼いの娘の踊り

コンサート通いを始めて6年が経過し、しかしこれまで一度も生演奏に触れる機会がなかったのがシベリウスの交響曲。

シベリウスの曲は、フィンランド第二の国歌とまで言われている「フィンランディア」こそわかりやすく人気があるけれど、交響曲は第2番を除くと広く親しまれているとは言い難い。一方で、熱心なクラシック愛好家にはシベリウスの交響曲は一定の人気があって、ドイツ系の曲とはまったく異なる個性と、現代音楽のような作曲技法の追求に偏った音楽でもないのに斬新な響きがあるところに僕も魅力を感じている。そんなシベリウスの交響曲を、人気曲の第2番とはいえ、聴く機会をようやく持てることになった。

演奏も、パーヴォ・ヤルヴィが主宰する非常設オーケストラ、エストニア・フェスティバル管弦楽団という未知の楽団であることで興味が更に増す。もう1曲のメインも個人的にもっとも好きなヴァイオリン協奏曲であるシベリウスの作品で、しかもソリストは五嶋みどり。まだヴァイオリン演奏の良し悪しなんてまったくわからなかった5年前に一度聴いたことがあるとはいえ、ある程度聴く耳が育ってきた今、もう一度聴き直してみたいと思っていた五嶋みどりで聴けるという(極めて個人的な要因ながら)ボーナス付きとあってはますます見逃すことができない、と気持ちを高ぶらせれ会場へ。

1曲め、「ベンジャミン・ブリテンへの追悼歌」は金管木管抜きの漂うような弦楽曲。美しくも、やや映画音楽的な10分程度の曲。

そして、個人的には本日のメインである「ヴァイオリン協奏曲」。オケがドンと入ってくる前の冒頭ソロだけで気持ちを激しく揺さぶる五嶋みどりに早くも圧倒されてしまう。例によって足をぐっと踏ん張って体をよじらせるように弾く五嶋みどりは、見た目とは裏腹に情感過多にならなず、繊細な表現に心を砕く演奏が持ち味と思っていたんだけれど、この日は想像以上に情感に溢れた熱演で、もちろんそれでも格調高さがいささかも失われていないところに聴き入るばかり。精度の高いフレージングでも機械的なムードは皆無、激しさ、繊細さ、そしてダイナミズムも圧倒的で、世界の一流奏者であることを存分に見せつけた演奏に、ホント、イイもの聴かせてもらいましたという感謝の気持ちしか出てこない。

休憩から、威勢のいい「テンペストの呪文」を挟んでの「交響曲第2番」。オケは精鋭集団というだけに流石の響き。金管木管はアンサンブルにところどころ難があったりはしたけれど、ソロ・パートはまずまず、弦は雄弁に歌い、積極的な主体性が前面に出たなかなかの実力のオケであることがわかる(HPにある、ルツェルン祝祭管弦楽団に匹敵は言い過ぎだけど)。シベリウスの寒々とした音色を見事に表現し、時に大上段に構えた煽りを交えつつパーヴォの機敏な進行でキビキビとした演奏は聴き応えがあり、初めて聴くシベリウスを存分に味わうことができた。

海外オーケストラとしてはチケット代もリーズナブルで、なかなか聴かせるオケで、また機会があれば是非観たいと思わせるものがあり、五嶋みどりの素晴らしい演奏を聴けたことも相まって、良き平成最後の日になった。

ノット指揮スイス・ロマンド管弦楽団 2019年日本公演

ノット・スイスロマンド2019


2019年4月13日
東京芸術劇場
【演目】
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲(辻彩奈)
(アンコール)バッハ 無伴奏ヴァイオリンパルティータ第3番 "ガヴォット"
マーラー:交響曲第6番「悲劇的」

辻彩奈はテレビで観た印象そのままの感じ。正確さも楽器の歌わせ方も大したもので、技術はとてもしっかりしているし表現力もある。若さ漲る直線的な勢いが前面に出た演奏で、音楽が硬いし、曲に深く入り込んで独自の表現で聴かせるのはまだまだこれからという感じで、悪くいうと青臭い(妻は瑞々しいと感じたそうです)。どう表現するかの手法を含めた技術はすでに高いレベルにあるけれど、その技術をどう使ったら音楽として素晴らしい表現になるか、という音楽性はかなり未熟な印象。でも、この若さ(21歳)で表現の深さまで求めるのは流石に酷というもので、これからもっと良い演奏家になっていってほしいと期待感を抱かせるポテンシャルはあると思いました。

マーラー第6番は、ガッシリしたオケの鳴りとともに始まり、良い演奏になりそうな予感。実際このオケは楽器の歌いっぷりがとても良く、精度よりも演奏者の自発的な表現を重視する僕好みのタイプ。特に木管の元気な鳴り方は、なかなかのもの。しかし、ずっと聴き進めて行くと、線の揃いが怪しいところが少なからずあり、特定の楽器が鳴りすぎていたりするところなどが耳に付きはじめる。これは指揮者の責任でもあるけれど、オケ全体のアンサンブルが良くないし、パート間の音のつながりも良くない。短くてシンプルな曲なら誤魔化せたかもしれないけれど、マーラーの第6番という大曲だとそうはいかない。一言で言ってしまうと紡ぎ出される音楽にデリカシーがない。

近年はコンサートを厳選して、少々お代が高くても評価の高いオケを聴くようにしていたし、聴いてきた演奏も実際に素晴らしいものばかりだったので、比較するのは酷だというのはわかっている.。少々嫌らしい言い方になってしまうけれど、美味しいものを食べてきたあとに、そこそこ美味しいものだといろいろ足りないところが見えてしまうのです。

それでも前述の通り、スイス・ロマンド管弦楽団は楽器、オケの歌いっぷりは素晴らしい。過去に観てきたオケの中でも上位に来ると言ってもいいくらいで、優れた音楽監督、指揮者がうまく統制できたら素晴らしい演奏を聴かせるんじゃないかという期待感を持たせるだけのポテンシャルはあったと思います。

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