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趣味の人生を楽しむサラリーマンの日記

過小評価されているベース・プレイヤー ジョン・ディーコン

JohnDeacon201803


筋金入りクイーン・マニアである僕は、クイーンの魅力についてならいくらでも語り続けることができる。今回は、ベース・プレイヤーとしてのジョン・ディーコンについて書いてみたい。

その前に、ベースという楽器についての話から。

そもそもベースというのは誰もが認める地味な楽器。中学生の時に聴いていたアリス(ってあのアリスです)の後楽園ライヴ盤では、曲の中でバックメンバーが一人ずつ紹介されるパートがあって、ギターやキーボード、ホーンセクションの紹介ではカッコイイ見せ場(聴かせどころ)となっているのに対し、ベースがコールされると、伸びやかさや華やかさとは対極にある低い音がウネウネ鳴っているだけの盛り上がらない世界になり、この地味な楽器は一体なんなんだろう、と思ったものだった。そもそも、この当時は通常バンドと呼ばれる演奏形態にベースという楽器があることじたいわかっていなかった。

ベースが地味な楽器であることは、演奏でソロ・パートが与えられることも珍しくないジャズの世界でも同じこと。メロディを奏でる楽器でない(単体で曲にならない)という性質上、直接的に耳に残るフレーズはほとんどなく、低い音なので音程も他の楽器に埋もれて聞き取りづらい。ギターやキーボードのフレーズは主旋律を担うことも多いから鼻歌で歌ったり口ずさんだりすることはあるけれど、ベース・ラインを口ずさむなんてことはまずない。メロディ楽器でないという意味ではドラムもそうだけれど、特にロック系のドラムは派手だし、モノを打ちつけるアタック感のある音は嫌でも耳に飛び込んでくる。

勢い、ベースは一番の脇役と扱われ、特にアマチュアがバンド組もうぜ、となったときに一番下手で主張がない奴が担当を押し付けられることが多い(らしい)。

ちょっと話が横道に逸れます・・・。

僕はあんまり「音楽をわかっていない」という物言いはしないようにしている。なぜなら「カラヤンはブルックナーがわかっていない」「ケルン・コンサートの素晴らしさがわからない人はキース・ジャレットのことをわかっていない」というような、自身の考えに固執した教条主義的思想を正当化する言葉として使われることがよくあるから。そもそも、自分は音楽に精通しているという奢りがなければこんな物言いは出てこないわけで、そういう人は過去の自分の音楽観に囚われて新しい音楽の面白さを知る機会を自ら狭めているようなものであるとまで思っている。それでも長年いろいろな音楽を聴いていれば、良い音楽、深みのある音楽(繰り返し聴いてもいろいろな良さを発見できる)を選別するようになる。これは奢った態度ではなく、より音楽の面白さがわかるようになって、いろいろな角度から聴いて、また掘り下げて聴いてみて素晴らしいと思えるようになったこと、もっと簡単に言うとその音楽が持っている魅力をより深く楽しめるようになったことであるように思う。だから僕は「音楽をわかっている」という言葉を、その音楽の楽しみ方をわかっている、という意味と自分の中で捉えている。

ベースに話を戻すと、ロック、ソウル/ファンク、ジャズ/フュージョンなど広い意味でのポピュラー音楽全般において、ベースというのは極めて重要な楽器である、という話をしたときに「もちろん、そうだよね」と瞬時に回答できるか否かで、音楽がわかっているか、そうでないかの一線がある程度引けると僕は思っている。なぜならベースは、表面を彩ることはなくても、音楽を下支えして、音空間を凝縮したり広げたりすることができる楽器である、ということを理解してるかどうかがわかるから。

そこで本題に入る(相変わらず前置きが長いですねえ)。

そもそも、クイーンがデビューした当時の英国といえば、アメリカから入ってきたブルーズをベースに、歪んだヘヴィなギターを大々的にフィーチャーしたロックがトレンディな音楽だった。だからデビュー当時のクイーンがハードロックを志向していたのは当然のことで、後にソロ・アルバムでダンス・ミュージックやオペラを取り入れたフレディ・マーキュリーでさえ、当時はフェイバリット・ミュージシャンにジミ・ヘンドリックスを挙げていたほどだった。本稿主役のジョン・ディーコンも、後にソウル・ミュージック好きであることをカミングアウトすることは広く知られている話とはいえ、初期のクイーンにおいてはハードロック・グループの中でのベースの役割に徹していて、しかしそれでいてメロディックなプレイをしていた。

しかし、ポップ性が高まり始めた「シア・ハート・アタック」から徐々に本性を表してくる。ポピュラー・ミュージックの中でもソウル/ファンク/R&Bは、もっともベースの重要性が高い。というか、それらのジャンルの音楽はベースが作るグルーヴを基本に音楽ができているといっても過言ではない。ソウルを愛好していたジョンが、ただコード進行をなぞって低音の厚みを加えるだけの役割に留まるはずがなく、躍動感と推進力を生み、音楽の重心を上下に移動させながら、アクセントを付けて曲を支え、間接的には曲に表情を付けることまでやってのけている。

ちなみに、ロックの世界にはクリス・スクワイアやジョン・ウェットンのようにゴリゴリと押しまくるタイプもいるし、ジャズ系ではジャコ・パストリアスやリチャード・ボナのようにスーパー・テクニックで圧倒するタイプもいる。ある意味ベースの範疇を超えた表現にまで至った人たちと言えるんだろうけれど、個人的にはベース本来の役割を外れてしまっている規格外のプレイヤーという位置づけになってしまっている。もちろん素晴らしいことは100%認めていますが。

僕が好きなベース・プレイヤーは、ロック系だとアンディ・フレイザー(フリー)、ジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)、ニール・マーレイ(ホワイトスネイクなど)あたり。誰が弾いているかクレジットされていないことが多いソウル/ファンク/R&B系には素晴らしいベース・プレイヤーが山ほどいるし、スライやタワー・オブ・パワー(ロッコはまさにワンアンドオンリー)のベースなんて本当にカッコイイ。

それら名プレイヤーと遜色ない、いや、幅広く音楽をカバーするという意味ではそれ以上に素晴らしいのがジョン・ディーコンである。

御存知の通り、クイーンの音楽性は実に多彩。これだけいろいろな音楽性を有しているロックバンドは空前にして絶後である。ついでに言うと、それにもかかわらず、「一体何がやりたいの?」にならず、「聴けばすぐにクイーンとわかる(クリフ・リチャード)」ところも他のロックバンドの多くが到達できていないクイーンならではの偉大さである。

フレディの独自の声と型にハマらない歌いまわし、ブライアンの色彩豊かなギター、ロジャーのアイディア豊富なドラムがそうした多彩な音楽性の源になっているのは間違いないけれど、ジョンのベース抜きには実現できない。

そのセンスがわかりやすいのは、高音域を上手く用いたメロディックなベースラインを自然に織り交ぜるところである。初期のライヴを聴くと、重ね録りのギターとコーラスに埋もれがちなスタジオ盤とは異なり、クッキリとベースラインが聴き取れる。"Liar"ではスポットライトを浴びるシーンもあるし、この時点で既に安定したベースを弾いていることがよくわかる。スタジオ盤でも3枚目あたりから柔軟性に富んだフレーズやベースラインが目立ちはじめる。"Misfire" や "Bring Back That Leroy Brown" のような軽快さは楽器を演っている人ならそのフィーリングを出すにはそれなりの腕とセンスが必要であることがわかるはず。"Sweet Lady" のイントロの空間の埋め方、"Long Away" のギターソロの後、ブライアンの歌の入りに合わせて弾いているフレーズの進め方を聴いてほしい。"The Millionaire Walts" のイントロなんて歌っているかのようではないか。単純なリズムの "All Dead, All Dead" では安定と落ち着きを与えながら実は曲をしっかりと主導している。"Don't Stop Me Now"の疾走感と高揚感は、歌メロだけではなくベースラインがあるからこそ(だからこの曲にはギターが必要ない)。もちろんここに挙げた曲以外も、見事なフレーズの宝庫。そして特筆すべきは、これだけ魅力的なベースラインを繰り出しておきながら出しゃばっている感がまったくないことである。スター・ベーシストは主張が強すぎて、実はバンドのカラー、音楽性を限定していしまう傾向があるけれど、ジョンのベースは真逆で、クイーンの音楽を拡げているのである。

これらは別に難しいこと、複雑なことをやっているわけではない。フレーズのコピーだけなら誰でもできるに違いない。でも、あの柔らかさと軽快さを実現できる人はきっとジョンしかいない。QUEEN+Paul Rodgers、QUEEN+Adam Lambertを聴いて、リズムに柔軟性がなく単調に聴こえてしまうのはジョンが不在であることが大きな理由であると思う。

ロック・グループは星の数ほどあれど、これほど素晴らしいベース・プレイヤーはそうはいない。

僕が洋楽にハマったのはクイーンとの出会いがあったから。当然のことながら、はじめに恋に落ちたアーティストが深みのある音楽性を持っているとは限らない。音楽の経験値が上がってくると、キャッチーなだけの音楽、耳に心地良いだけの音楽(それはそれでこの世に必要ではありますが)だけだと物足りなくなってくる。僕も洋楽にハマり始めたころにレコードを買って聴いていたアーティストや、若い頃に繰り返し聴いていたアルバムが、今聴くと魅力に乏しく、薄っぺらに聴こえてしまうものがあるし、音楽歴の長い人なら同様な経験をしている人は少なくないんじゃないかと思う。ジャズやクラシックを聴くようになった今でもクイーンの音楽は色褪せず、気分が高揚する。そんな素晴らしいクイーンの音楽にジョンは作曲者として貢献したのはもちろん、ベース・プレイヤーとしての貢献も計り知れないことをファンは忘れてはいけないと思う。

Sailors' Tales Box / King Crimson - ついにお布施の終焉か?

Sailors` Tales201801

箱化を進めてきたキング・クリムゾンの最終盤がついに登場。いやー、長かった。今度こそこれで終わりという安心感(苦笑)。まあ、次は50周年記念シリーズとか出くるかもしれないけれど、もういいです、お腹いっぱいです。これ以上食べられません。

さて、最後となった今回の箱は、基本的にアイランズ期のもの。マニアならご存知の通り、デビュー当時の第1期ラインナップはあっさり崩壊、一時的にメンバーを呼び戻して制作したのが「In The Wake Of Poseidon」、スタジオ・アルバムを制作するためだけにメンバーを寄せ集めたのが「Lizard」というわけで、その間、ライヴ活動はなく、メンバーを固定化してライヴ活動できるようになったのが「Iskands」以降。今回の箱は便宜上というか、ついでのような感じで「In The Wake Of Poseidon」「Lizard」の40周年記念音源を収録しているとはいえ、ライヴ音源のアーカイヴがメインである以上、アイランズ期のものと考えて良いでしょう。

以下、内容について。

ブルーレイを含めて「In The Wake Of Poseidon」「Lizard」「Islands」それぞれについて数多くのボーナストラックが収録されている。DGMのサイトでStormy Monday Selectionsと称して小出しにされている音源を除き、あくまでもパッケージ・メディアとしてリリースされているか否かの観点で言うと、初公開と思われる音源が結構ある。以下、紹介する曲は、パッケージ・メディアでも発表済みのものについて※の注釈を入れている。ただし、完全に把握するのは至難の業なので参考情報程度に留めていただければと。
(本音:もうここまで来て全部把握している人も、把握しようという気のある人もいないでしょ?)

[Disc 1(CD)]
「In The Wake Of Poseidon」40周年記念リミックス版収録。
ボーナス・トラックとして、
"Cat Food (single A side)" ※既発
"Groon (single B side)" ※既発
"Cadence And Cascade (Guide Vocal: Greg Lake)" ※既発
"In The Wake Of Poseidon (take 3)(ヴォーカルなし)"
"The Devil's Triangle Part I: Merday Morn (early running mix)"
"The Devil's Triangle Part II: Hand Of Sceiron (Fripp/Tippett overdubs)"
"The Devil's Triangle Part III: Garden Of Worm (Steven Wilson mix)"
"Peace - An End (Alternate Mix)"
が収録されている。
既存の40周年記念盤のボーナストラックにあった "Groon (2010 Mix)" がカットされていて、こちらはブルーレイに収録されている。

[Disc 2(CD)]
「Lizard」40周年記念リミックス版。
ボーナス・トラックとして、
"Indoor Games (Alternate take)"
"Happy Family (Alternate take)"
"Lady Of The Dancing Water (Alternate take)" ※既発
"Prince Rupert Awakes (Jon Anderson, Vocals 2017 Mix by David Singleton)"
"Prince Rupert Awakes (Keith Tippett, Piano)"
"Bolero - The Peacock's Tale (Original Studio Recording, Bass Overdub: Tony Levin)" ※既発
"Prince Rupert's Lament (Alternate Take, 2015 Mix by Jakko Jakszyk)"
が追加収録されていている。
既存の40周年記念盤のボーナストラックにあった "Cirkus (Studio run through with guide vocal from original session)" がカットされていてこちらはブルーレイに収録されている。

[Disc 3(CD)]
「Islands」40周年記念リミックス版。
ボーナストラックとして
"Formentera Lady (Take 2, 2010 Mix by Steven Wilson)" ※既発
"Sailor's Tale (Alternate Guitar Takes, Remix by Alex R. Mundy)"
"Ladies Of The Road (Rehearsal / Outtake, 2010 Mix by Steven Wilson)" ※既発
"Prelude - Song Of The Gulls (String Section, Take 2)"
"Islands (Original Studio Recording, Vocal Overdub: Jakko Jakszyk)"
が追加収録されていている。
一方で、既存の40周年記念盤にあった
"Islands (Studio run through with oboe prominent)"
"Sailor's Tale (Original Recording Session Alternate Mix/Edit)"
"A Peacemaking Stint Unrolls (previously unreleased)"
"The Letters (rehearsal/outtake)"
"Ladies Of The Road (Robert Fripp & David Singleton remix)"
がカットされていて、いずれもブルーレイには収録されている。("Sailor's Tale" は Edit, Alternate Mix, 2010 by Steven Wilson と微妙に注釈名が違うけれど同じだと思う)

というわけで、これまでの3枚の40周年記念スタジオ・アルバムに収録されていたボーナストラックに差し替わりがあるものの、ブルーレイに収録されているのでこのボックスさえあれば音源としては一応すべて入手できる。

以下、ライヴ音源について。既発の音源は、録音が乱れている部分を整えたり、ノイズが減っていたり、音質が良くなったり、などクレジット通りにリストアされた形跡はあるものの変化はごく僅か。とはいえ、部分的な差し替えなどの編集がなされている形跡も見当たらないため、本ボックス収録日については現時点での最良音源になっていると考えて良さそう。

ちなみにアイランズ・クリムゾンでこれまでに公開されてきた音源は、サウンドボード録音で、(最上と言えるものは僅かながら)良好なものが数多くあり、このボックスでそれらがすべて網羅されているわけではない。例えば71年5月11日Plymouth、同5月22日のBirmingham、同11月13日のDetroit、72年2月27日のOrlandなどの良好な音質のものを収めていないところが少々いやらしい。代わりに未発表音源2日分を入れておくので納得してほしいということなんだろうか。

[Disc 4-7(CD)]
アイランズ期ラインナップ始動時、71年4月12日~15日までのドイツ・ズームクラブでのライヴ。DGM Live ! で公開済みの音源。まだ、古いレパートリーが多く、演奏も丁寧な印象。Incompleteの曲が多く、今回のボックス化でもほぼそのまま。「ほぼ」と書いたのは、たとえば従来音源では2日目の"21st Century Schizoid Man"の頭がほんの少し欠けていたところが、しっかり頭から入っていたりするという違いがあるにはある(だからどうしたレベルの話)。

[Disc 8-9(CD)]
71年8月10日、ロンドンのマーキークラブでのライヴ。レパートリーも「Islands」からの曲が中心に移り、第1期の曲が減っている。演奏もズームクラブのときよりも進歩が感じられる。アイランズ・ラインナップ初期の音源としては音質もパフォーマンスもセットリストも最上と言えるもの。

[Disc 10(CD)]
72年2月11日、ウィルミントンでのライヴ。ここからアメリカ・ツアーの音源になる。
この音源については他の既発音源より音質の向上を実感できる。ただし "Groon" でところどころ音のバランスが乱れるところなどはそのままで変わらない(マスター音源がこうなんでしょう)。

[Disc 11(CD)]
72年2月12日のニューヨークEarly Show。初公開音源。音質はアースバウンドと同程度。このボックスでの公開まで寝かしておいた理由は特にないように思える、良い意味でのアイランズ・クリムゾンのアベレージ的音質とパフォーマンス。"Cirkus" の冒頭をボズがスキャットで歌って、メロトロンをエレピっぽいサウンドだけでやっているのは珍しいかも。この日の "Groon" は原曲のフレーズを入れようとフリップが四苦八苦している感じが面白い。
収録曲:
Pictures Of A City (Incomplete)
Formentera Lady
The Sailor's Tale
RF Announcement
Cirkus
Ladies Of The Road
Groon
21st Century Schizoid Man

[Disc 12(CD)]
72年2月12日のニューヨークLate Show。
初公開音源。こちらも音質はアースバウンドと同程度。近年初公開はほとんどが "Pictures Of A City" の終盤からになっており、この音源もその例に漏れない。
収録曲:
Pictures Of A City (Incomplete)
Formentera Lady
The Sailor's Tale
RF Announcement
Cirkus
RF Announcement
Ladies Of The Road
Groon
21st Century Schizoid Man
Cadence And Cascade (Incomplete)

[Disc 13(CD)]
72年2月18日、デトロイトのライヴ。既発音源ながら未聴だったので比較できず。音質はアースバウンドと同程度。

[Disc 14(CD)]
72年3月6日、ピッツバーグのライヴ。既発音源で ”Improv" に続いて最後に収録されていた"Cadence And Cascade (Incomplete)" がオミットされている。それ以外は従来と同じ曲と内容。この日の音源は、曲間でフリップのアナウンスの他にステージでのふざけた感じのやりとりやお遊び演奏などが多く収録されていた。それらをすべてカットしているため、"Cadence And Cascade" のカットを含めてトータルで12分程度短くなっている。カットしたおちゃらけ部分はある意味アイランズ・クリムゾンの性質を表していたという側面もあるため、記録として考えると残念な措置。一方で純粋にライヴ・アルバムとして仕上げるという観点ではこの編集で正解と言える。

[Disc 15(CD)]
72年3月8日、ミルウォーキーのライヴ。冒頭のアナウンスがカットされているものの、この音源では曲間のおふざけはそのまま残っている。"Groon"は、1分21秒の冒頭部分と唐突に途中からの部分の2曲扱いになっていたが冒頭部分はオミットされた。"21st Century Schizoid Man" は一度演奏が始まってから停止してメンバー紹介、そして再度イントロに入るという流れだったところから1度目のイントロとメンバー紹介をカットしている。

[Disc 16(CD)]
72年3月10日、イリノイ州ピオリアのライヴ。既発音源との違いはなさそう。

[Disc 17(CD)]
72年3月12日、コレクターズ・クラブ初期のころから最高音質で知られているサミット・スタジオでのライヴを今回新たにリミックス。従来とは楽器の定位が明らかに違っていて聴いた瞬時にわかるほど音場が広くなっている。特にギターとサックスそれぞれの音が左右に広がったステレオ感を強調したものになっているところが大きな違いで、しかしタイトな音像を好む人は従来音源の方が良いと思うに違いない。この日は、何か事情があったのかメロトロンが使われていないことが大きな特徴で、それでも何の不足もないどころかソリッドで引き締まったパフォーマンスになっているところが素晴らしい。リアルタイムで単発ライヴ・アルバムとして発売されていたら名盤となっていた可能性すらある音源。

[Disc 18(CD)]
既存の「Earthbound」に
"Picture Of A City (3月8日)"
"Formentera Lady(3月8日)"
"Cirkus(2月27日)"
を加えた拡張版。2002年のリマスターとクレジットされているが、手元の30周年記念盤音源よりもどういうわけか少しだけ音のヌケが良い。追加収録曲はデヴィッド・シングルトンがリマスタリングしている。
ちなみに、レコードの時代には数少ないキング・クリムゾンの正規ライヴ盤として「Earthbound」は重宝されてきた。一方で、音が悪いライヴ盤としても有名で、レコード収録時間に合わせて曲もカットされている部分が多く、更に今となっては元音源を無編集状態で聴けるようになっているために価値が薄れてしまった。それでも、"21st Century Schizoid Man"を除く4曲はすべてヴォーカルなしの曲で演奏部分に絞って、パワフルなジャムを得意とするこのバンドの基幹部分にフォーカスしたダイジェスト版としての価値があった。ところが、このボックスセットと同時に発売された40周年記念版を制作するにあたって5曲では足りないと判断したのか、3曲(ブルーレイでは更に加えて4曲)を追加することになり、その追加された3曲はいずれもヴォーカル入りで、従来盤が持っていた方向性がぼやけてしまうことになった。もちろん、その方向性がレコードの時代に意図されたものだったかどうかはわからないのでこだわる必要はないんだけれど、拡張版「Earthboud」は単に72年全米ツアーのセレクション音源という趣向になった。まあ、全公演の音源を日常的に聴いている人もいないだろうから、それはそれでアリなのかもしれない。

[Disc 19(Blu-ray)]
「In The Wake Of Poseidon」の5.1chミックス(40th Anniversaryでリリース済み)がメイン。その他、以下の曲を収録。

Additional Material(24bit/96KHz, Stereo & 5.1ch):
Groon (2010 Mix)
The Devil's Triangle (Mixed from Surviving Multitrack Elements by Steven Wilson)

Alternative Album Selection(24bit/96KHz):
Peace - A Beginning (Live - Japan, 2015 from Japanese Heroes EP) ※既発
A Man, A City (Live Fillmore West, Dec 15th, 1969, from Epitaph) ※既発
Cadence And Cascade (Guide vocal: Greg Lake from 40th anniversary DVD-A) ※既発
In The Wake Of Poseidon (Unedited Master, Rough Mix)
Peace - A Theme (Robert Fripp, Rehearsal)
Cat Food (Mono Single Mix)
The Devil's Triangle Part I (Early Recordings, Rough Mix)
The Devil's Triangle Part II (Mars, Part II, 4 Track Recordings)
The Devil's Triangle Part III (Mixed from Surviving Multitrack Elements by Steven Wilson)
Peace - An End (Alternate Mix from 40th anniversary DVD-A) ※既発

Addtitional Material(24bit/96KHz):
Cadence And Cascade (Original Studio Recording, Vocal Overdub: Jakko Jakszyk)
Groon ( Single B Side) ※既発
Cat Food (Single A SIde) ※既発
In The Wake Of Poseidon (Instrumental)
The Devil's Triangle (Mars, Pt III piano prominent)
Cadence And Cascade (Unedited Master) ※既発
Cat Food (Rehearsal Take)
Groon (take 1) ※既発
The Devils Triangle (Rehearsal Take, Wessex Studios) ※既発
Cadence And Cascade (Original Studio Recordings, Vocal overrdub: Adrian Blew) ※既発
Groon (Take 4)
Groon (Take 5) ※既発
Groon (Take 6)
The Devil's Triangle Part III (Mars Part III, 4 Track Recordings)
Cadence And Cascade (Reheasal take, Wessex Studios) ※既発
Groon (Take 15) ※既発

この「In The Wake Of Poseidon」だけでなく、次以降の「Lizard」「Islands」にも数多くのボーナストラックが付いている。DGMのサイトでStormy Monday Selectionsと称して小出しにされている音源を除き、、あくまでもパッケージ・メディアとしてリリースされているか否かの観点で言うと、かなり多くの音源が初公開と思われる。40周年記念盤の初期リリースである「Lizard」のころはまだDGMでレア音源をあまり公開しておらず、それらが収録されていなかったため、今回のブルーレイで日の目を見るものが多くなっている。一方で「In The Wake Of Poseidon」「Islands」のリリースはおよそ1年遅かったため、レア音源の収録が多く、今回のブルーレイで初公開となっている音源が少なめになっている。

この他にLPとシングル "Cat Food" のアナログ起こし音源を収録。余談ながら、レコード独特の音を愛でることは理解するものの、わざわざデジタル化してブルーレイで聴いてレコードの良さを感じることができるとは思えず、こうした趣向が流行っているのがよくわからない(イエスでもスティーブン・ウィルソン・ミックス盤にアナログ起こし音源が入っている)。


[Disc 20(Blu-ray)]
「Lizard」の5.1chミックス(40th Anniversaryでリリース済み)がメイン。その他、以下の曲を収録。

Alternative Album Selection(24bit/96KHz):
Cirkus (Live, Moore Theatre, Seattle, June 11th, 2017) ※既発
Indoor Games (Alternate Take)
Happy Family (Alternate Take)
Lady Of The Dancing Water (Alternate Take)
Prince Rupert Awakes (Keith Tippett, Piano)
Bolero - The Peacock's Tale (Original Studio Recording, Bass Overdub: Tony Levin) ※既発
The Lizard Suite (Live Centre Videotron, Quebec City, Canada, July 7th, 2017)

Addtitional Material(24bit/96KHz):
Cirkus (Extract: Robert Fripp, Guitar)
Cirkus (Studio Run Through with Guide Vocal) ※既発
Cirkus (Extract(2): Robert Fripp, Guitar)
Indoor Games (Redux Mix)
Happy Family (Redux Mix)
Mel&Tron (Mel Collins, Robert Fripp, Working Idea)
Lady Of The Dancing Water (Take 1: Robert Fripp, Guitar)
Dawn Song (Take With Metronome)
Last Skirmish (Keith Tippett, Piano; Gordon Haskell, Bass; Andy MaCulloch, Drums)
Cirkus (Mark Charig, Cornet; Gordon Haskell, Bass; Andy MaCulloch, Drums)
Happy Family (Fulham Palace Cafe Rehearsal)
Prince Rupert's Lament (Alternate Take, 2015 Mix by Jakko Jakszyk)
Big Top (Keith Tippett, Piano)
Prince Rupert Awakes (Jon Anderson , Vocals 2017 Mix by David Singleton)

この他にLPのアナログ起こし音源を収録。

[Disc 21(Bru-ray)]
「Islands」の5.1chミックス(40th Anniversaryでリリース済み)がメイン。その他、以下の曲を収録。

Alternative Album Selection(24bit/96KHz):
Formentera Lady (Take 2, 2010 Mix by Steven WIlson) ※既発
Sailor's Tale (Alternate Guitar Takes, Remix by Alex R. Mundy)
The Letters (Outtake) ※既発
Ladies Of The Road (Rehearsal / Outtake, 2010 Mix by Steven Wilson) ※既発
Prelude - Song Of The Gulls (String Section, Take 2)
Islands Flagment (Reference Casette Flagment: Robert Fripp, Mellotron) ※既発
Islands (Original Studio Recording, Vocal Overdub: Jakko Jakszyk)"
Islands (Early Rehearsal Flagment: Robert Fripp and Paulina Lucus)

Addtitional Material(24bit/96KHz):
Formentera Lady (Early Take) ※既発
Sailor's Tale (Edit, Alternate Mix, 2010 by Steven Wilson) ※既発
Drop In (Early Reheasal) ※既発
Ladies Of The Road (Robert Fripp & David Singleton remix) ※既発
Islands (Studio run through with oboe prominent) ※既発
Formentera Lady (Take 1) ※既発
A Peacemaking Stint Unrolls ※既発
Ladies Of The Road (Take 5) ※既発
Islands (Early Studio Run Through)
Formentera Lady (Take 3) ※既発
Studio Soundcheck (Boz Burrel, Robert Fripp, Ian Wallace, July 1971)
Fulham Palace Cafe Rehearsal (Mel Collins, Robert Fripp, Ian Wallace, December 1971)
Ladies Of The Road (Early Rough Mix) ※既発
Formentera Lady (Take 4) ※既発

「Islands」については40周年記念DVD-Audioに収録されていた"Pictures Of A City" "Sailor's Tale" の初期リハーサルテイクはこのブルーレイ盤には収録されていない。

この他に以下音源を収録。
・LPのアナログ起こし音源。
・71年4月ズームクラブ4公演、5月11日Plymouth、5月28日Glasgow(従来5/22BBirminghamとされていたもの)、8月10日マーキー、11月13日Detroitの24/96音源。


[Disc 22(Blu-ray)]
CD「Eatrthboud」拡張版に更に
"Ladies Of The Load(2月27日)"
"The Letters(3月13日)"
"The Sailor's Tale(Extended version)(2月26日)"
"Groon(Extended version)(3月10日)
を追加した24bit/96KHzハイレゾ音源を収録。また、アナログ起こしも収録。

3月12日サミット・スタジオは、24bit/96KHzで2ch ステレオとクアドロフォニック音源を収録。後者はスティーヴン・ウィルソンがスタジオ・アルバムで制作した5.1chのような音の分離はもちろん望めないものの、サラウンド感はまずまず。驚いたのは "The Creater Has A Master Plan" が、CDでは15分だったのに対して38分ものバージョンになっていること。加えられた部分はブルースで、フリップが珍しくブルースを、あくまでもブリップのスタイルで演奏していること。

ライヴ音源は、Disc 26、27、10、11、12、13、15に加えて、本ボックスCDには収録されていない2月17日Chicago、2月26日Jacksonville、2月27日Orlando、3月11日Indianapolis、3月13日Denvor、3月14日Denvorといった、DGM Live!で公開済み音源をハイレゾで収録(元の音源の音質を考えると意味があるとは思えないけど)。

かつて「Ladies Of The Load」という編集盤に収録されていた54分に及ぶ"Schizoid Men"もここに再収録(24bit/96KHz)。一応この曲について説明しておくと、72年全米ツアー各公演の "21st Century Schizoid Man" の中間演奏部分を切り貼りして54分に引き伸ばした、いわば "THRaKaTTaK" の "21st Century Schizoid Man" 版。終盤にブッツリ切れて空白があって再会、最後がまたブッツリと切れてしまうところもそのまま。

[Disc 23(DVD)]
Disc 22からライヴ音源をオミットしたこと以外は同じ内容で、24bit/48KHzにスペックダウン。

[Disc 24(DVD)]
今回のボックスで初公開となったDisc 26、27、10、11、12を24bit/48KHzで収録。

[Disc 25(CD)]
Disc 25~27はボーナスディスク扱い。
オーディション/リハーサルをつなぎ合わせて編集したと思われる "Blow No.1" "Blow No.2" を収録。もちろん演奏は荒っぽく完成度は低い。その代わりありのままのバンドの演奏が聴けるという意味では貴重で、時にフォービートのベースとシンバルの刻みが出て来るなど、ワイルドなだけでないジャムバンドとしての基礎能力の高さが垣間見えるところが興味深い。

[Disc 26(CD)]
前ディスクに続いて "Blow No.3" を収録。2曲め以降は収録日不明のライヴを収録(約43分)でこちらも初公開音源。モノラルで音質は良くはないものの、音の乱れが少ないサウンドボード録音で、ブート慣れしている人なら十分許容範囲。演奏内容から、恐らくアイランズ・クリムゾンとしては後半(全米ツアー?)のものと思われ、パフォーマンスは良い。"Ladies Of The Load" のコーラスパートでのフリップのややふざけ気味のギターやフリップのアナウンスの後のお遊び演奏は他ではちょっと聞き覚えがないもの。"Letters" の内容も他音源とやや違っていて以外とレアな内容になっている。
収録曲:
Pictures Of A City (Incomplete)
Cirkus
Ladies Of The Road
21st Century Schizoid Man
RF Announcement
The Letters

[Disc 27(CD)]
初公開音源。音質は Disc 26と似たような感じ。演奏の内容も時期的に近いように感じる。"The Sailor's Tale" がおよそ20分と長い(ドラムソロが長いだけ)。
収録曲:
Pictures Of A City (Incomplete)
Cirkus
Ladies Of The Road
Formentera Lady Improv Section
The Sailor's Tale
21st Century Schizoid Man

ボーナスディスクの2日分は、クオリティとしてはこれまで公開されていたものと遜色なく(というかもっと悪いものがいくらでもある)、日付不明であったために日の目を見ていなかっただけのように思える。

さあ、これでいよいよ終わりです(苦笑)。僕の場合、ジャズにもクラシックにも聴きたい音楽が沢山ありすぎるので、これらボックスたちをどこまで聴き込むことがあるかわからない、いや、たぶんごく一部のリニューアルされた高音質音源を除くと、たぶん聴かないでしょうね。

余談ですが、僕は「In The Court Of Crimson King」のボックスだけ購入していません。すべてのアルバムの中で一番好きじゃないから。このデビュー・アルバムは「アビーロードを蹴落として全英No.1になった」と永らく言われて続けて半ば神格化(今ではそんな事実はなかったことがわかっている)されていますが、そんなにいいですかね? 1曲めの衝撃、しかし、あとは牧歌的な曲と、メロトロン大洪水の過剰な叙情曲と構成のまったくない静かなインプロ曲という内容で名盤と言えるのか疑問です。そういうマニアもいるんです。

News Of The World 40th Anniversary Box

News Of The World 40th210711

かつて、CDが多くの過程に普及しはじめたころ、有名アーティストが揃ってボックスセットを企画した。それはアンソロジー的なものであり、高音質のCDへの収録によって価値を持たせるものだったように思う。その後、さまざまなアーカイブ放出的なボックスセット企画され、最近は、名盤と呼ばれるアルバムに付加価値を持たせて何枚かのCDを収録、ボックス化するという手法がトレンドになっている。このクイーンの「News Of The World 40th Anniversary Box」もそんな成り立ちのひとつと言えるでしょう。

本ボックスのハイライトは2つ。

ひとつは、「News Of The World」のレコーディングセッションと77年全米ツアーのドキュメンタリーを収めたDVD(約55分、輸入盤は日本語字幕なし)で、これまで見たことがない映像が多く収録されている。モノクロ映像が多く、ひとつのパッケージ製品とするには弱いものの、こうしたボックスに収録するのは妥当な判断で熱心なファンにも満足できるものでしょう。英AmazonのレビューによればBBC4で放送されたものとのこと。

もうひとつは、Disc 2 の Raw Seesions。
全曲、曲が始まる前後のスタジオでのチャット、試し弾き、弾き残しを加えたセッション風の仕上げ。ただし、多くの曲の演奏部分は既にある程度仕上がっていてコーラスも重ねられており、厳密に言えば Raw というよりは完成前テイクという趣になっている。

[We Will Rock You]
ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。
最後のギターソロはまだ仕上がる前の別テイク。

[We Are The Champions]
ヴォーカルはほぼ完成版に近いメロディの別テイク。
2コーラス目からブライアンのギターによるオブリガードがずっと付く(少々鬱陶しい)。
最後のサビの繰り返しが2回分多くなっている。

[Sheer Heart Attack]
完成前のラフ・ミックスでリード・ヴォーカルなし。アレンジはほぼ完成版と変わらない。

[All Dead All Dead]
歌メロ、歌詞がほぼ仕上がった状態でフレディがヴォーカルを仮入れしたと思われるもの。
本テイク用でないからこそのリラックスした歌い方が聴きどころ。

[Spread Your Wings]
歌メロ、歌い方がまだ未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。

[Fight From The Inside]
歌詞、メロディが未完成な状態での仮入れと思われるヴォーカルのテイク。コーラスもなし。

[Get Down Make Love]
これぞ Raw Session。オーバーダブなしの恐らくは一発録り。ギミック無しのバンドの素の演奏が聴ける。

[Sleeping On The Sidewalk]
77年、2度め(すなわち「News Of The World」発売直後)の全米ツアーのごく初期のみに演奏されていたときのライヴ音源。スタジアムでのライヴに向いている曲とは言い難く、セットリストからすぐに外れたのも無理はない。リード・ヴォーカルはフレディ。シンプルな曲なだけに演奏はスタジオ盤とほぼ変わらない。

[Who Needs You]
ジョンのラフなアコギと、まだ一部歌詞ができていない状態のヴォーカルにマラカスだけ加えて、とりあえず録っておきました風のリハーサルのようなテイク。

[It's Late]
恐らくバッキングテイクは本テイクと同じでリード・ヴォーカルが別テイク。ブリッジ部分以降のヴォーカル以外それほど大きく歌い方は違わない。ギター・ソロは別テイク。

[My Melancholy Blues]
ヴォーカル別テイク。少し力の抜けた素朴な歌い方で、録り方のせいか声が生々しく目の前で歌っているかのよう。

ボックスには、初見の写真を含むLPサイズブックレット、当時のエレクトラ・レコード発行のプレス・リリースや写真、バックステージパスのレプリカなどが付属。

しかしながら、音源的に見るべきものは悲しいことに上記ディスクのみ。この種のレコーディング・セッションを部分公開する企画は他のアーティストでもよくあるものだけれども、熱心なファンなら良くご存知の通り、舞台裏まで見てみたいというマニア心理を満たすためのものに留まる。曲としての完成度が高いはずがなく、繰り返して聴きたくなるようなものではない。

その他のディスクは、熱心なファンなら持っていて当然のものばかり。Disc 1 は2011年のリマスターと同じ、Disc 2 は以下のように既発の音源が多い。

[1] Feelings Feelings(Take 10, July 1977)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み
[2] We Will Rock You (BBC Session)
[3] We Will Rock You (Fast) (BBC Session)
[4] Spread Your Wings (BBC Session)
[5] It's Late (BBC Session)
[6] My Melancholy Blues (BBC Session)
→ [2]-[6] は Complete BBC Seeesions に収録済み。
[7] We Will Rock You (Backing Track)
[8] We Are The Champions (Backing Track)
[9] Spread Your Wings (Instrumental)
[10] Fight From The Inside (Instrumental)
[11] Get Down, Make Love (Instrumental)
→ [7]-[11] は初公開。
[12] It's Late (USA Radio Edit 1978)
→ 初公開の超短縮バージョン
[13] Sheer Heart Attack (Live in Paris 1979)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。
[14] We Will Rock You (Live in Tokyo 1982)
→ 2011年リマスターのボーナス・ディスクに収録済み。
[15] My Melancholy Blues (Live in Houston 1977)
→ ビデオ「レア・ライヴ」に収録済み。
[16] Get Down, Make Love (Live in Montreal 1981)
→ 「Live in Montreal」に収録済み。
[17] Spread Your Wings (Live in Europe 1979)
→ 「Live Killers」に収録済み。
[18] We Will Rock You (Live at the MK Bowl 1982)
→ 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。
[19] We Are The Champions (Live at the MK Bowl 1982)
→ 「Queen On Fire: Live at The Bowl」に収録済み。

つまり、目新しいのは [7]-[12] のみ、しかも [7]-[11] は単なるカラオケ・バージョンで、 [12] はこんなのもありました的な無造作な切り刻み版。既発の音源でも入手困難ならともかく、21世紀に入って以降にリリースされた音源から多数流用しているばかりか、単に「News Of The World」収録曲であるという理由なだけで81年、82年の音源を入れたり、ライヴ音源の古典中の古典である「Live Killers」から流用したりしてお茶を濁すのはいかがなものか。

このボックスは、ブックレットを見ればわかる通り、77年という時代、特に北米ツアーに焦点を当てた企画であるように思う。今年のアダム・ランバートとの北米ツアーの「News Of The World」を意識したビジュアルとセットリストも40周年だからこそのものであったはず。

しかし、だからこそこのボックスには大きな欠落がある。77年ヒューストン公演は、これまでも(今回のDVDでも)部分的にまずまず良好な映像と音源が公式に公開されており、ブートレグでは1ステージすべてを観ることができる。画質があまり鮮明でないという問題はあるものの、荒っぽくもロック・バンドとして一番脂が乗った勢いのあるこの時期のステージを公開するとしたら、このボックスをおいて他になかったんじゃないんないだろうか。しかも今回、"Sleeping On The Sidewalk" ライヴ・バージョンの公開で、77年北米ツアーにまだ良質な音源があることもわかってしまった。こうした音源が今回公開されなかったことで、ブライアンとロジャーが存命のうちにそれらが日の目を見る可能性はほとんどなくなったと落胆しているマニアも少なくないでしょう。

ブックレット(ただし収録音源のデータ詳細は書いていない)やおまけ類、LP、箱の存在感に魅力を感じている人には価値があるかもしれないけれど、映像や音源重視の観点において、このボックスの内容は物足りないと言わざるを得ない。これだけの値付けをするならばそれなりのものを作っていただきたいもの。

これまでのクイーンがリリースしている発掘モノは、レインボウ(74年)、ハマースミス(75年)、モントリオール(81年)、ミルトンキーンズ(82年)といったブートレグでも画質が良い映像のライヴ版こそ、しっかりとした形で出ているけれど、それ以外のものや新音源については小出し感が強く、ブライアンとロジャーの方針に疑問を禁じ得ない。お願いだからマニアを甘く見ないでくださいよ、と直接本人たちに言いたい気分です。

ロックのエッセンスを思い出させてくれるグランド・ファンク・レイルロード

GRAND FUNK201707

僕は生まれが1967年なので、洋楽を聴くようになったときには80年代になっていた。エネルギーが有り余る中高生に魅力的に映ったのはハードロックで、80年代となるとアイアン・メイデン、サクソン、レインボー、キッスなどが僕の周りでは人気を集めていて、もう少し経つとLAメタルが、更にもう少し経つとガンズ・アンド・ローゼスが流行った時代だった。ところがリアルタイムのそういったロックに僕はあまり馴染めず、自分の幼少時代に隆盛を極めていた60年代後半から70年代のロック、たとえば初期のクイーン、レッド・ツェッペリン、ディープ・パープル、フリー、キング・クリムゾン、イエスなどの方が断然魅力的に映っていた。

70年代のロック、特に独特の憂いが漂っている英国モノに夢中になって、その時代の名盤特集企画が組まれていたときの雑誌はそれこそ解説文を反芻できるほど読み、限られたアルバイト代でレコードをどんどん買った。この時代の代表的なアーティストやアルバムは20代前半までにかなり聴いてしまっていたと思う。例えばブラック・サバスやナザレスなど、ピンと来なくてそのまま聴かなくなったバンドもあったけれど、ハンブル・パイや初期のウィッシュボーン・アッシュのように今聴いてもカッコいいと思えるバンドに巡り会った。この時代のロックがなぜこんなに魅力的かというと、ミュージシャンが自分のスタイルの音楽を迷いなく演って、聴衆もそれを評価していたからだと思う。80年代になると、ロックはMTVという媒体を通して大衆に売り込むスタイルが確立されてしまい、聴き手も個性より耳当たりが良いものを求めるようになってしまった。今思えば、ロックに限らずチャラチャラしたバラードがやたらとヒットしていたのはそのような音楽ビジネスのトレンドをよく表した現象だったと言える。自分らしい音楽を追求するという純真さよりも、売れる型にハメてそれに乗っかることが優先されるようになり、しかも当たれば大金を手にできるようになってしまった。有り体に言えば音楽よりも金儲けが優先される大量生産商品にロックが変わっていってしまった。当時はロックしか聴いていなかったけれど、今思うとR&Bやファンクなども同様な印象で、70年代のものの方が断然音楽が輝いている。金儲けが第一になってしまった80年代以降の音楽の多くは今聴いても本当にツマラナイ。

素晴らしき70年代ロックを若い時に貪るように聴いてきたものの、ある程度お気に入りのものが手元に揃い、30代になると新規で新しいバンドを開拓するという行動はもうしなくなっていた。若い時に見つけた素晴らしいアーティスト、アルバムで満足しており、若いころに聴いてあまりピンと来なかったものを聴き返してみても魅力を発見することはなかった。だから興味がジャズに移って行き、新たに発見して聴き込むようになったロック古典名盤はすっかりなくなってしまった。以降、お気に入り70年代の大物アーティストの発掘音源、リマスター盤以外はロックのCDを買わなくなって行く(そういう人は少なくないと思うけれど)。

ある日、Apple Musicでいろいろ古い音楽をつまみ食いをしていた。なんとなく、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルやスリー・ドッグ・ナイトに行着き、そのうちにグランド・ファンク・レイルロードが出てきた。懐かしい! グランド・ファンクは一応若い時に少しだけ聴いたことはある。でもそれほど好きというわけではなくてベスト盤1枚を所有していただけ。改めて初期の2枚を聴いてみたら、これがもう血沸き肉踊るとしか言いようがないロックではないか、と興奮して思わずCDを購入してしまった。

よく知られているように、彼らは上手いバンドではない。いや、そんな遠回しな言い方はやめよう。ハッキリ言って下手だ。曲もアレンジも演奏も、工夫しているように思わせるところがない。高度な音楽性を感じさせることも知性を感じさせることもない。でも、聴いていると魂が揺さぶられる。"Inside Looking Out" のイントロを聴いて欲しい。ハイハットでカウントを取るベタベタな始まり方なのに気持ちが昂ぶる。お祭りの太鼓を聴いて胸が高鳴るのと同じように。それは人間が本能的に持っている衝動性と言えるもので、ロックとはそういうものだと思い出させてくれる。演奏技術でもアレンジでもなく、ミュージシャンのエネルギーとパッションをダイレクトにぶつけるという潔さ。気持ちが入っていない、形式だけの音楽で人間はコーフンしたりはしない。こういうフィジカルなプリミティヴさを持つロックは現代にはもうAC/DC(未だに活動を続けている彼らは尊敬に値する)以外には存在していないと思う。こう言っちゃあ悪いけど、グランド・ファンクやAC/DCを聴くとレディオヘッドなんてチマチマとセコい、音らしきものにしか聴こえない(ロックというカテゴリーで自分の肌に合わないグループはもちろん存在するものの嫌いという感情を抱くことはほとんどなく、しかしU2とレディオヘッドだけは「オレたち、知的だろ、才能あるだろ」っていうナルシスティックな胡散臭さばかりが前面に出ていて、音楽を自己顕示欲のために利用しているだけにしか思えないからハッキリ言って嫌いです)。

グランド・ファンクがそういう野性味を持ち味とするグループだということはもちろん知っていた。では、なぜ今頃になってこんなに心に飛び込んでくるのか。それはたぶん、30代以降、ジャズとクラシックばかり聴いてきたからだと思う。特にここ4年くらいはクラシックばかり聴いてきたから、音楽が持つ衝動性、その魅力を忘れてしまっていたのかもしれない。ジャズもクラシックもそれぞれに素晴らしさがあるけれど、ロックにはロックにしかない素晴らしさがある。グランド・ファンク・レイルロードはロックの魅力の核心を鮮明に思い出させてくれる。

ジャズを聴き始めて以降、新しく僕のライブラリーに加わった古典ロックはない、と先に書いたけれど、2015年に出たテイストのワイト島完全版と、グランド・ファンク・レイルロードの初期2枚は例外的にそこに加わることになった。どちらも演奏は荒っぽいし、決して上手くはない(ロリー・ギャラガーは最高のギタリストだけど上手いのとはちょっと違う)。でも、ロックの一番重要なエッセンスが凝縮されている。

僕はかねがね、音楽好きならいろいろなアーティストやジャンルを聴いた方がいい、と言い続けてきた。好きなものを聴くだけでなく、他のものを聴くことで元々好きだったものの魅力がより理解できるようになるからだ。ジャズやクラシックを沢山聴いてその素晴らしさがわかるようになったからこそ、ロックの素晴らしさがより理解できるようになる。そうやって楽しみ方の幅を広げることができるから音楽は飽きないんだと思う。これは音楽に限った話ではない。物事、知識の幅を広げれば広げるほど多くのことがわかるようになるから面白い。ひとつのことを深掘りするだけでは見えなくなってしまうこともある。付け加えるなら、そういうことをわかった上で物事に向き合っている人と、自覚なく向き合っている人とでは、同じものから得ることができることも違ってくるんじゃないかと思う。

お布施道 Part V-On (and off) the Load 1981-1984 / King Crimson

KC80s201612

熱心なファンであればご存知の通り、キング・クリムゾンは74年の「Red」で解散している。

今思えば若く未熟な音楽評論家やライターが作り上げたイメージ、限られた情報しかなかった時代に、英国ロックは何やら崇高な存在かのように祭り上げられていた70年代。後追いながら、僕も学生時代には70年代の英国ロックを同じように一段高いところに置いて「アメリカのチャラチャラしたロックなんて聴いてられるかっ!」と鼻息が荒かった。ここ日本においてはキング・クリムゾンは70年代英国ロックのそんなイメージを代表するグループとして扱われていたように思う。余談ながら、かつて英会話教室で、音楽好きを自称する講師と少なくとも15人以上は音楽談義した経験から言うと、イエス、ピンク・フロイド、ジェネシスはほとんどの人が分かってくれたものの、キング・クリムゾンをわかってくれたのはたったの1人だけで、良く言われている日本だけの歪なクリムゾン崇拝現象を実感したことがある(DGMサイトも過半数は日本からのアクセスなのだとか)。

それはさておき・・・

81年にディシプリンと名乗るロバート・フリップの新バンドが誕生、間もなくキング・クリムゾンと改名する。記憶にあるビル・ブルーフォードのコメントでは「名前をキング・クリムゾンにするだけでオファーが急に増えてギャラが何倍にもなった」そうで、こう言ってはナンだけれども、これだけの実力がありつつもこの程度の一般的知名度のメンバーではイチからのデビューはかなり厳しかったらしい。名前を変えるだけで耳を傾けてくれて待遇が大幅に良くなるのなら、クリムゾンの名前を掘り起こして使ったことは当然のことのように思える。

そんな経緯で始まった80年代のクリムゾンは、アメリカ人が2名、ギタリストが2名という、それまでのクリムゾンとはまったく別の性質を持つグループになった。そりゃそうだ、別のバンドとして始まったんだから。しかし、キング・クリムゾンという名前を使ってしまったが故に、70年代のクリムゾンと比較され、異質であるところを忌み嫌うファンも現れた(特にここ日本では)。

そういう僕も、後追いで聴いて70年代のクリムゾンが気に入り、それからから「Disipline」を聴いた。つまり、リアルタイムで聴いてきた人たちと同じ流れで80年代のクリムゾンに接したから、当時のファンと同様に大きな抵抗感を抱いてしまい、正直なところあまり聴かなかった。91年に「Frame by Frame: The Essential King Crimson」ボックスを購入すると、Disc 3が80年代のベスト盤的選曲になっていて、そこで初めて聴いた「Beat」「Three Of A Perfect Pair」収録曲が予想外になかなか良く、ようやく残り2枚のアルバムを購入して「なるほど、コレはコレでカッコいいかも」と思うようなれた。更に、94年から活動を再開したクリムゾンはメタリックなサウンドを指向してはいたものの、音楽の基盤は80年代の4人が作ったもので、ここで改めて80年代ラインナップのレベルの高さを理解することになった。ダブル・トリオを聴いて80年代クリムゾンを再認識したのは僕だけではなかったんじゃないかと思う。

ロバート・フリップは40周年記念盤として過去のアルバムを次々とリミックス/リマスター、5.1ch化してきて、「Discipline」を2011年にリリース。あとは「Beat」「Three Of A Perfect Pair」で間もなく完結するのかと思いきゃ、その後音沙汰が途絶えてしまっていた。そして2016年も終わりに差し掛かろうというときにようやくリリースされるとともに「全部入り」ボックスも合わせてリリースされることに。これはフリップとしてはいささか不用意なビジネス方法で、本来なら「Beat」「Three Of A Perfect Pair」を先に出して(買わせて)から、付加価値コンテンツを上乗せして箱で売る、という流れになるはずのところが、同時発売となると単品は買わなくなってしまう人も現れるだろうから(はい、ワタクシです)。まあ、もうすぐ50周年を迎えようとしているのに40周年記念企画が終わっていないのはマズイという判断もあったんでしょう。

では、「On (and off) the Load 1981-1984」について以下書き連ねてみる。

【CD】
[1] Discipline 2011ミックス
[2] Live In Japan
[3] Beat 2016ミックス
[4] Live At Alabamahalle
[5] Fragmented
[6] Three Of A Perfect Pair 2016ミックス
[7][8] Absent Lovers
[9] Are You Recording Gary?
[16] Live At The Moles
[17] Europe 1982(Frejus)

まずはオリジナル・アルバムのスティーヴン・ウィルソン・ミックスから。
[1] は2011年リリースの40周年記念盤と同じもの。
[3] はこの箱と同時に単独発売もされている40周年記念盤。"Requiem"は4分長いエクステンデッド・バージョンに差し替えて収録。ただし、このエクステンド・バージョンは冒頭のフリップのサウンドスケープ部が長いだけで特に感動はない。ボーナストラックとしては"Abesent Lovers(Studio take)"というインストを追加。それほどテンションが高いわけではなく幾多あるリハーサル音源よりはまとまっているかな程度の完成度。
[6] も40周年記念盤。30周年記念盤とはボーナストラックが異なっており、3バージョンあった"Sleepless"はカット、代わりに"Robert's Ballad" "Shidare Zakura"という曲が追加されている。一見、従来と同じ曲かと思う"Indutrial Zone"は"A"と"B"がそれぞれ1:45→3:15、4:33→5:34になり、15:50の"C"が追加されている。

3作品とも、ミックスはアナログ的な柔らかい感触と音の見通しの良さが特徴の、既に良く知られたスティーヴン・ウィルソン流の仕上がり。オリジナル・ミックスにあった音の削除、あるいは収録されていなかったマスターテープからの(こんなフレーズ入ってたっけのような)音の拾い上げは今回はないと思う。

その他の音源について。
[2] は81年12月18日、国際ホールでの初来日ステージ。このときの日本ツアーはまとめてDGM Live!で公開済み(僕は未聴)で、この日のみ本ボックスのCDとして収められている。音質はオーディエンス録音としては良好な部類。演奏は82年以降のものと比べると幾分ラフで、そのまだ熟しきっていないところが聴きどころか。観客からの「Andy!」という掛け声に「Wrong Band?」と応えるブリューや、ところどころ聴こえる観客の話し声につい笑ってしまう。
[4] はClub32「Live In Munich」と同じ音源でリマスターを施して(6曲は新しいソースから採用とコメントあり)おり、音質はワンランク向上している。
[5] はClub21「Champaign-Urbana Sessions」と同一音源。こちらもリマスタリングが施され音質は少し向上している。
[7][8]は従来盤のリマスター。リリースが比較的新しいこともあってか劇的な音質向上は感じない。それでも、角が取れて聴きやすい今風の音に仕上がっている。80年代クリムゾンはコレクターズ・クラブやDGM Live!で幾多の音源が公開されている中、内容、質ともにやはりこれが最高峰。
[16] は、まだDisciplineというグループ名だったこのメンツのデビュー・ギグを記録したClub11「Live At The Moles」と同一音源。元々オーディエンス録音で音質が悪いソースだが、幾分音が良くなって聴きやすくなっている。生まれたばかりのバンドならではの手探り感を楽しむ音源。
[17] は、DGM Live!で配信済み82年8月26日Frejusと同じ音源。しかし、どういうわけだか曲順を大幅に入れ替えてある(既発音源が恐らくは実際の曲順)。音質は一皮むけたと言って良いレベルで向上している。
尚、[16][17]はボーナス・ディスク扱いでCDケースではなく厚紙に差し込んで収められており、豪華ブックレットでも内容については触れられていない。

これ以外に、スタジオ盤3部作のレコーディング・セッションからそれぞれ抜き出して編集した [9] があり、「Larks' Tongues In Aspic」ボックスの"Keep That One, Nick"、THRAKボックスの"JurassiKc THRAK"と同じ趣向の、Larks' Tongues In Aspic Part III版 "Are You Recording Gary?" (既に"VROOOM VROOOM"の中間部が演奏されていたりする)の他、各アルバムごとのセッション音源を1曲に編集(こちらは演奏が止まったり会話が入ったりしない)したトラックが3曲収録されている。音源の目新しさという意味では本ボックスの目玉ディスク。全体的にリハーサルのような演奏でテンションも高くないため、何度も繰り返して聴きたいとは思わないものの、あそこは裏でこんな演奏をしていたんだ的な楽しみ方ができる。


【DVD-Audio: Discipline】
アルバム本編:
5.1 DTS (DVD-videoでも再生可)
5.1 LPCM (24bit/96KHz)
LPCM Stereo(24bit/48KHz) (DVD-videoでも再生可)
MPLS Lossless Stereo(24bit/96KHz)

ボーナストラック:
(1) A selection of Adrian's vocal loops
(2) The Sheltering Sky ( Alternative mix - Steve Wilson )
(3) Thela Hun Ginjeet ( Alternative mix - Steve Wilson )
(4) The Terrifying of Thela Hun Ginjeet
(5) Elephant Talk 12" Dance mix
2曲あるスティーヴン・ウィルソンの別ミックスは、2011ミックスよりも更にクリアなサウンドに磨き上げられており、それでいて違和感のない仕上がり。製作時に2種類のリミックスを作成して、採用されたのが2011ミックス、採用されなかったのがこちらなのかもしれない。

その他コンテンツ:
30thアニバーサリー・リマスター(30周年記念盤と同じマスターのもの)
アルバム・ラフ・ミックス(ギターが強調されてドラムが引っ込み気味の粗いミックス)

ビデオ・コンテンツ:(LPCM Stereo 24/96、LPCMサラウンド)
Selections from The Old Grey Whistle Test
(1) Elephant Talk (口パク)
recorded live ath The Venue, October 1981
(2) Frame By Frame
(3) Indiscipline
recorded at the BBC, March 15th 1982
珍しいテレビでの生演奏。コンパクトにまとめてあるが演奏に手抜きなし。

以上、既発40周年記念盤とコンテンツ、スペック共に同じ(だと思う)。

【DVD-Audio: Beat】
アルバム本編:
5.1 DTS (DVD-videoでも再生可)
5.1 LPCM(24bit/48KHz)
LPCM Stereo(24bit/48KHz) (DVD-videoでも再生可)
MPLS Lossless Stereo(24bit/48KHz)

その他コンテンツ:
30thアニバーサリー・リマスター(30周年記念盤と同じマスターのもの)
オルタネイト・アルバム(ミックスやエフェクト、編集が一部異なる。"The Howler"はヴォーカル抜き。)

ボーナストラック:
(1) Abesent Lovers(Studio)
(2) Neal Jack And Me (alt take)
(3) Absent Lovers (Live)

ビデオ・コンテンツ:(LPCM Stereo 24/96、LPCMサラウンド)
(1) Heartbeat(Promotion Video)
(2) Waiting Man(Live)
(3) Heartbeat(Live)
(1)はこの時代としてはがんばって作った、しかし今となっては少々気恥ずかしいプロモ・ビデオ。(2)(3)は82年9月29日ミュンヘンのライヴから2曲。

単独40周年記念盤と仕様が同じかどうかは不明(わざわざ別仕様を用意する方が手間もコストがかかるだろうから同じなのでは?)。どういうわけかDVD-Audioでのみ再生できるコンテンツが「Discipline」の96KHzから48KHzにスペックダウンしている。

【DVD-Audio: Three Of A Perfect Pair】
アルバム本編:
5.1 DTS (DVD-videoでも再生可)
5.1 LPCM (24bit/48KHz)
LPCM Stereo(24bit/48KHz) (DVD-videoでも再生可)
MPLS Lossless Stereo(24bit/48KHz)
DVD-Audioのみに収録されているボーナストラックはなし。

その他コンテンツ:
30thアニバーサリー・リマスター(30周年記念盤と同じマスターのもの)
"Sleepless" プロモーション・ビデオ

音声のスペックは「Beat」のDVD-Audioに準ずる。

尚、「Beat」「Three Of A Perfect Pair」の5.1chスティーヴン・ウィルソン・ミックスは、これまで同様に素晴らしい仕上がりで、「Discipline」を含め、どちらかと言えば軽くて平板と思っていた80年代クリムゾン・サウンドに適度な厚みと立体感を与えることに成功していると思う。元々ジョークである"King Crimson Barber Shop"はトニーの声が各チャンネルに分かれて分離良く聴こえるところが結構笑えます。


【Blu-ray: Discipline】
DVD-Audioの内容に加え、映像コンテンツとして81年10月5日Moles Clubでのフランス・テレビ局によるインタビュー、82年8月27日のLive In Frejus(7曲:既発DVD「Neal Jack And Me」と同じ内容)を収録。"Matte Kudasai (Alternate Version)" は30周年記念バージョンの最後ではなくAdditional Tracksのところに移されている。
メイン・コンテンツの音声は、5.1 DTA-MA、 5.1ch & 2.0ch LPCM (すべて24bit/96KHz)で収録されておりDVD-Audioよりもハイスペック。

【Blu-ray: Beat】
DVD-Audioの内容に加え、82年9月29日のLive At Alabamahalle 6曲(DVDに加えて4曲)の映像(LPCM 24bit/48KHz)を収録。
メイン・コンテンツの音声は、5.1 DTA-MA、 5.1ch & 2.0ch LPCM (すべて24bit/96KHz)で収録されておりDVD-Audioよりもハイスペック。

【Blu-ray: Three Of A Perfect Pair】
DVD-Audioの内容に加え、84年モントリオール公演の「Absent Lovers」5.1 DTA-MA (24bit/96KHz)、LPCM surround & Stereo (24bit/96KHz)音声+「Three Of A Perfect Tour Live In Japan」5.1 DTA-MA (24bit/96KHz)、LPCM surround & Stereo (24bit/96KHz)の映像を収録。「Live In Japan」は編集前の単独別カメラ、別日の映像も収録している(音声はLPCM 24bit/48KHz)。
メイン・コンテンツの音声はこちらも5.1 DTS-MA (24bit/96KHz)、 5.1ch & 2.0ch LPCM (すべて24bit/96KHz)でDVD-Audioよりもハイスペック。尚、「Absent Lovers」の5.1chはスタジオ盤ミックスのような音の明確な振り分けはなく、リアに残響感を補足する仕上がりになっているので過度な期待はしない方が良いかもしれない。


【ボーナス・ディスク(DVD)】
Disc 18はDVD「Neal And Jack And Me」と同じ日の映像2公演分を収録。ただし、微妙に内容が違っている(後述)。
それ以外には、本ボックスCD収録音源やコレクターズ・クラブで公開済みの音源を5公演分収録。
・Philadelphia (82/7/30)
・Asbury Park(82/7/31)
・Cap D'Agde(82/8/26)
・Frejus(82/8/27)
・Europe 1982(82/8/27)※Frejusのリマスターおよび曲順変更版

Blu-rayには、本ボックスのDVD-Audio(=40周年記念盤)と既発DVD「Neal And Jack And Me」コンテンツがすべて含まれているため、これさえあればこれまでのマテリアルは不要、と言いたいところだけれども完全に同じというわけではなく、少々ややこしい。

Blu-ray収録の映像、画面はワイドスクリーン化してある。でも、画像はやや横広がりだし、元々SD画質のものを引き伸ばしているのでむしろ粗さが目立ってあまり良い仕上がりとはいえない。また82年ミュンヘンの6曲、「Live In Japan」共にボーナスDVD(Disc 19)ではオリジナルの4:3画面のままで収録され妙な画面引き伸ばし感がなくてむしろ自然で良い印象。結論として、映像に関してはBlu-rayよりもDVDのボーナス・ディスクの方が良いように思える。

音声は、84年Live In JapanはDTS-MAにグレードアップして音質もクリアにはなっているものの音に厚みがなく、明らかにBlu-rayの方が音が良いかと尋ねられると必ずしもそうとは言いにくい(違っていることは確か)。DVD「Neal And Jack And Me」の84年Live In Japanは、手持ちのDVDだと仕様上は収録されていることになっているはずの5.1ch Dolby Digitalでどういうわけか再生できない(メニューでも選択できるが切り替えても2chステレオ)。Blu-rayでは5.1ch DTS-MAと表記されているものの、こちらも2chでしか再生できない。ところがボーナス・ディスク扱いのDisc 18のDVDではDTS 5.1ch再生ができる。

この箱(DVD、Blu-rayとも)に収録されている84年Live In Japanは「Neal And Jack And Me」では1曲めに収録されていた"Three Of A Perfect Pair"が曲順通りのところに収まり、未収録だった"Discipline"が追加されているところがトピックとなっている。

【まとめ】
今回の箱は、スタジオ・アルバムの40周年記念バージョンを3セット分も収録しているところがこれまでとは異色で、DGM Live!で多数公開されているこのラインナップのライヴ音源は良質なものだけを選んでブラッシュアップしてある。ライヴ音源に関してはフリップから「これは押さえておいてほしい」とお墨付きが出たものと言って差し支えないんじゃないだろうか。ブートレグ・レベルのライヴ音源をあるだけ詰め込んでいた70年代ボックスと比べると良心的と言って良いかもしれない。とはいえ、この箱でしか聴けない音源は CD 7「Are You Recording Gary?」とビデオ「Live In Japan」の"Discipline"、ミュンヘンでのライヴ映像4曲分くらい。既発ライヴ音源のリマスター、よりハイレゾ仕様のBlu-ray、ビデオ「Live In Japan」の追加映像、おまけ(当時のメモのコピーやチケット、84年日本ツアーのパンフレットのレプリカなど)、箱という体裁に魅力を感じないようであれば既発のDVDや単品の40周年記念盤で良いと思う。

なんて言ってはみましたが、この記事を読んで気になるような人なら買っちゃった方がスッキリすることでしょうね。次はヌーヴォ・メタル期かアイランズ期が来るんでしょうか。

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